12.クロの才能と家でご飯
「すごいですね。なんでも使いこなせる、いわゆる『ウェポンマスター』ってやつです」
なるほど、すごいな。得意な武器が多いから最強ってわけじゃないけど、扱える武器が多いというのは状況に応じて有利な武器を使えるっていうことだ。
「なるほど。しかしそれだと何を持たせればいいんでしょう…」
「そうですね。なんでも良いと思いますが…まぁ魔物相手に色々と使えるのは剣ですね」
「分かりました。それで実力はどうなんでしょう?」
「かなりセンスがあります。私が指南してもよろしいでしょうか?」
「そうなんですか!はい、ぜひお願いします」
「よろしく、お願いします」
「ではクロくん。明日の午前にいらっしゃい」
「はい」
クロにセンスがあって良かった。カヤさんが教えてくれるなら安心だ。
「カヤさん、ありがとうございました。クロ、そろそろ帰ろうか」
「わかった」
「疲れたか?おんぶするか?」
「だ、だいじょ…いや、うん、おんぶ」
断ろうとしたけど、結局おんぶして欲しいようだ。よしよし。よく頑張ったな。
2人の子どもをおんぶしてるから不格好だが、クロも疲れたのかすぐに眠ってしまったので仕方ない。
「あれ、もふたくんじゃない。どうしたの?」
「めーぷるさんですか。いえ、ギルドから帰ってるとこですよ。あ、めーぷるさんは初めてですよね。今は眠っちゃってますが、白い髪の子がユキ、黒い髪の子がクロです」
「え、人型の魔物!?」
「…違いますよ。2人はスラムで襲われてたのを保護したんです」
「へぇ。そんなクエストもあるんだ。いやー、てっきりもふたくんがまたやらかしたのか、白昼堂々誘拐してるのかと思ったよ」
「俺をなんだと思ってるんですか」
半目でめーぷるさんを睨むと、後半は冗談よ、と笑った。
じゃあやらかしてるのかと思ったのかよ、とは思ったがどうやら無自覚で色々とやってるらしいので触れないでおく。
「あ、家を買ったのでめーぷるさんも来ますか?」
「おや、もふたくん家持ちか。いやこの子達がいるなら宿じゃ不安よね。行かせてもらおうかしら」
「そうなんです、ちょうどこの前大金が手に入りましたから」
「なるほどね」
さて。家に着き、2人を寝かしつけるてからめーぷるさんにお茶を出す。
「お、ありがと。」
「それで、めーぷるさんは何かしてたんですか?」
「ん?あぁ、ずっと店番してて退屈だからブラブラしてただけよ」
「あー、確かにずっと店番は大変ですよね」
「そーそー。プレイヤーのナンパも多くてさー。私そんなにチョロそうかしら。」
「はは。めーぷるさん可愛いですから。」
「ちょ、ちょっともふたくん、からかわないでよ」
「別にからかってませんよ。」
めーぷるさんは褒められ慣れていないのか?
確かに恥ずかしいことを言ったとは思うが、顔を真っ赤にしてあたふたするめーぷるさんが新鮮でかわいい。
「あ…そろそろ空腹ゲージヤバいわ。帰るね」
「おや、それなら俺が料理しますよ」
「もふたくんは料理してるの。じゃあ頂こうかしら」
「はい、召し上がってください。」
買った野菜や、持っているラビットの肉で炒め物をする。味付けも塩こしょうしかないし、簡易なものしか作れないけど。白米が欲しいけどまだ見つかってないんだよな。
『ラビット肉と野菜炒め+4』
料理スキルが働いているのか、バフが付いている。まぁ戦闘しないからいらないんだけど、数字が上がるのは嬉しくなって炒める時間とか味の濃さとかつい研究しちゃうよな。
「おまたせしました。ありきたりの野菜炒めですが」
「へぇ…いただきます。」
「いただきます」
「あ、おいしい…!え、バフ付いてるんだけど…。攻撃、最大体力上昇…?効果値が低いとはいえ食事でバフ出来るのはすごいわ…」
「あれ、食事のバフって珍しいんですか?」
「あー、知らないのね…。料理も調薬の時と一緒で、食材を集めて料理するだけだったから開発されなかったのよ」
「へぇ〜。ま、いいや。売れる情報なら棚ぼたってことで」
「無関心だなぁ…。ごちそうさま。今日はありがとね」
「いえいえ、お粗末さまでした」
めーぷるさんが帰ったタイミングでユキが目を擦りながら起きてきた。
「おにいちゃん、誰かいたの?」
「あぁ、友達にご飯を食べさせてたんだ」
「あ、それで美味しそうなの匂いがするんだね」
「食べるか?まだ残ってるぞ」
「食べる!」
「わう」
「フェルも食べるか。はいよ」
クロだけ食べないのは可哀想なので別で取っておいて、2人分を皿に分ける。
口周りを汚しながらガツガツ食べるフェルと、もぐもぐとハムスターのように口いっぱいに食べ物を入れているユキを見ていると胸がほっこりする。
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さん。」
「おにいちゃん。クロにぃ、冒険者になる?」
「そうだな。センスはあるみたいだからすぐになれそうだよ」
「…私、も、やりたいことあるの」
「…ふむ。」
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