13.ユキのやりたいことと遭遇再び
「私ね、おにいちゃんのために生産?手伝いたいの!ご飯作ったり、おくすり作ったり。クロにぃが冒険者になるなら、おくすりあったほうがいいでしょ?」
「なるほど。クロが狩り、採取してきてユキがサポートする。確かに合理的だ」
「それと、クロにぃがお金を稼ぐのに私が遊ぶなんて出来ないもの」
「それもそうか。分かった、いいだろう。」
「やった!」
まったく、この世界の子どもたちは働き者か?宿屋でお手伝いしてたし、こうして家を手に入れても働こうとするとは。
「料理は女将さん、調薬は…あー、あのおばあさん結局名前知らないなぁ。まぁあの人に頼ろうか。じゃあ、明日からな」
「わかった!」
「今日はもう遅いから、向こうの部屋でおやすみ。」
「はーい。おやすみ、おにいちゃん」
さてと。今日は夜更かししようかな。
何するか…うん、せっかくの夜更かしなんだ。夜空でも見るか。
街の中で落ち着いて見られそうなとこは…ないな。フェルは元気そうだな。よし、街の外へ行って星空を見るとしよう。
夜だが、街の出入りは出来る。
始まりの草原に続く東門へ向かう。
「夜遅くまでお疲れ様です。甘い果物ジュースでもどうですか?」
「おや、ありがとう。結構量があるね。交代中の者たちと分けておくよ。気を付けて行ってらっしゃい」
「はい、ありがとうございます」
ここの街の人達は優しい人ばかりで、だからこそ気遣いしたいし、優しくしたくなる。
俺はこの街が好きだ。
始まりの草原には初めて来た。起伏も少なく、まさに初心者用の草原って感じ。
さすがにここで星空を見るのは風情に欠けるな。どこか丘は無いだろうか…お、あそこ丘になってる。
いくら魔物が弱かろうと俺はもっと弱い。
フェルに護衛を頼み、のんびりと進んでいく。
しばらく進むと盛り上がった所へ着く。
ん?何かあるな。これは…墓石?
まぁいいか。少し離れ、仰向けに寝転がる。
目を瞑り、自然を堪能する。
は〜、なんか気持ちいい。頬を撫でる雑草がくすぐったいけど心地いい。
目を開けると、満点の星空。星座は詳しくないから分からないけど、とっても綺麗だ。
しばらくするとフェルもやって来て、俺が広げた腕を枕にリラックスし始める。
どうやら周りにいた魔物を片し、ここら辺はだいぶ安全になったらしい。
ふわふわの毛並みを堪能しているとなんだか時間がゆっくり流れていく気がする。
こんなにのんびりした気持ちになるのはいつぶりだろうか。ゆっくりフェルと2人きりでいられることは最近なかったな。
「最近あんま構ってあげられなくてごめんな」
「わふわふ」
気にしてないさ、と言うように返事をするフェル。ふ、良い奴だよ、お前は。
上半身を起こし、思いっきりフェルを堪能する。
「かっかっか。仲が良いようで何よりじゃ。」
唐突に聞こえた声にびっくりしたが、覚えのある話し方と笑い方で警戒心を解く。
「こんばんは、フェンリル。」
「こんばんは、もふた、フェルよ。」
「わふわふっ」
この前会った時の毛玉ではなく、話し方通りのおじいちゃん姿だ。
「いくらフェルがいるとはいえ魔物が蔓延るフィールドで寝転がるとは呑気なやつじゃな。」
「せっかくこんなにも自然が広がっているんですから。なんか、心が洗われる感じがします」
「かっかっ。よいのぉ、やはりお主は面白いな。時の旅人はひたすら戦闘戦闘戦闘じゃのに」
「いいんですよ、人にはそれぞれの楽しみ方があるんです」
「うむ、その通りじゃな」
「なるほど、興味深いお方ですね、風の王」
透き通った綺麗な声が聞こえた。どなた?
「そうじゃろ、儂が気に入ったんじゃからな、闇の王」
瞬きをする間に目の前に人が現れた。
「はじめまして、時の旅人、もふたよ。私は闇の精霊王、ルナと申します。」
儚げな雰囲気を纏った、すごい美人さんだ。
「はじめまして。ルナ様ですか。」
「様じゃなくて、さんで構わないわ。必要以上に敬わない。これは新鮮ですね。不遜は不遜で嫌ですが、敬われたいわけではありませんから。友人みたいで心地いいです」
「えっと…ありがとうございます?」
「えぇ、褒めているのよ。だいたい話しかけると頭を下げて、顔を上げてくれないもの。話しにくくて仕方ないわ」
精霊王なんてすごい存在の会ったら恐縮してしまうだろう。
むしろそれが普通なら俺の態度が失礼になっていたかもしれない。
「もふたさん。星空は、好きですか?」
「はい。俺たち、時の旅人が住んでいる世界では星がまったく見えないんです。なので、こんなに満点の星空を見てすごく好きになりました」
「まぁ…。そちらの世界では星空が見えないのですね…。それは一体、どうして?」
「えぇと、詳しくは分かりませんが、確か街が明るくて、星の光が見えない…と聞いた事があります」
「なるほど…。そちらの世界ではこの世界ではまだ分かっていないことが解明されてるのでしょうか」
「全てではないですが、こちらよりは発展しているので、多分そうだと思います」
フェンリルが自由を愛すように、ルナさんは知識を愛してるようだ。
「うん。私も気に入りました。もふたよ、貴方に私の直系を譲りましょう。貴方なら大切にしてくれるでしょう。」
肩に重みを感じ、見ると真っ黒のフクロウが乗っていた。暗殺とか得意そう。
「ホー」
「君が友達になってくれるのかい?」
「ホーホー」
「じゃあ…『テイム』」
『クンネレク・オウルがテイムを受け入れました。名付けをしてください』
くんね…?なんか難しい名前だな…。フクロウと言ったらアテナとかミネルヴァとか…。
いや、クンネレクっていう名前(ログを見た)があるんだから、ここは…
「お前はククだ。よろしくな?」
「ホーホー!」
「ふふ。良い名前ですね。ではククよ。彼を守り、彼を助け、彼を知るのです」
「ホホ」
「フェルよ。お前さんはよくやっておる。そのまま楽しむのじゃよ」
「では、そろそろ行くとしましょうか。また会いましょう、もふた」
「儂もそろそろ行くぞ。またな」
「はい。フェンリルもルナさんもまた会いましょう」
2人が居なくなるのを見てから街へ戻り、ログアウトした。
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お読みいただきありがとうございます。
素人ながら自由に書いている本作が思ったより伸びて驚いてます。ありがとうございます。
これからも楽しめるようなことを書いていきたいのでよろしくお願いします。
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