9.情報屋とお買い物

「そう。情報の価値に応じてお金で売ったり買ったりする人達。もちろん、全ての情報が揃ってるわけじゃないけど、相当隠したいこと以外はそこに情報を売るのがほとんどよ」

「なるほど。それに情報を売っておけば独占してる〜とかで叩かれなくて済むっていうのもあるんですかね?」

「その通り。精霊王にフェル、後は生産の工夫で品質の上昇なんかも売れるかもね」

「あれ、それもですか?工夫するくらい誰でもやってそうですが」

「そもそも手でポーション作りをしないのよ。調薬スキルを発動すれば即座に出来るから」

「え、それ俺初耳なんですが」

「あはは、一般的なことをむしろ知らないのね…」


 ふむ。そういうことならアリだな。別にトップを目指してるわけじゃないから隠しておくメリットがない。


「ではお願いします」

「りょーかい。じゃあギルマス呼ぶわね」


 待ってる間はなんとなく店の中を見渡す。

 アクセサリーが棚に、服はハンガーにかけて飾られている。

 うーん、戦闘しないからステータスはよく分からないな…。

 あ、フェルが狩り貯めした素材があるじゃん。


「めーぷるさん、素材って売れます?」

「え?まぁ買い取りはしてるけど…もふたくん戦闘出来ないんじゃ?」

「ああ、ログアウトしてる時間にフェルが狩ってるみたいで、インベントリにたくさん素材があるんですよ」

「え、そうなの!?便利すぎるじゃん…」

「あ、今思いついたんですが、戦闘できない職限定でこういうお助け精霊が渡される、とか…?フェンリル様は『時の旅人のくせに戦闘も生産もメインにしない職とは面白い』みたいなことでくれた訳ですし。モフらーのNPC好感度アップが影響してたりもするのかもですね」

「あー、お助け…それはあるかも。あ、素材は買い取るわ。インベントリ操作でアイテムの受け渡し出来るから」

「なるほど。」


 えっと、…ずいぶんと数があるけど…大丈夫かな。15種類の素材が300とか400とかあるんだけど。


「え、え、ちょ、多くない!?」


 しばらくして会計を済ますと、すごい額のG《ゴールド》を渡してきた。


「はー、大変だったわ。全部知ってる素材だったからマシではあったけど。」


 カランコロン。


「やっほ、めーぷるきたよー」

「来たわね。これが情報屋のギルマスやってるミィよ」

「キミがもふたくんだねー。よろしくー」

「よ、よろしくお願いします」


 なんというか、間延びした喋り方だけど衣装が…その、露出高めで直視しずらい。


「おやー?ウブな反応。かーわいいー。」

「こら、からかってないで本題に入るわよ」

「そうねー。聞かせてくれるー?」


 モフらーの職業、ゴミ拾いの依頼でフェンリル様と会い、気に入られてフェルをもらったこと、ログアウト中にフェルが狩りをして素材やお金が手に入ること、先程の考察。あと、調薬を自分の手でやること、工夫することで効果が上がることなどできる限りの情報を話した。


「う、うにゅ…まって。情報量多すぎ…。めーぷるアンタ、すごいのと知り合ったねー。」

「そうね、今になってすごい人物と知り合ったって思ってるわ…」

「ちょっと時間ちょうだい…精霊王と精霊の存在は結構な額になりそうねー。フェルちゃんの可愛さから欲しがる人多いしー。」


 そうして渡された額は、先程の素材を売った値段よりも桁が1つ多かった。


「え、ちょ、ちょっと。多すぎないですか!?」

「確かに今後も仲良く〜ってことで多少色を付けてるけどー、その値段は妥当よー。あ、フレンドなってもいいー?」

「あ、あぁ、はい。大丈夫です」


 突然大金持ちになって実感がない…。

 しかしこれだけお金があれば考えてたアレが実現出来そう、か…?


「では、色々とありがとうございました。」

「いえいえ。何かあればお互いに手を取り合いましょう」

「そうねー。また情報ちょうだいねー。」


 宿屋へ戻る前にもう一度ギルドへ向かうことにした。


「カヤさん。相談があるのですが」

「もふたさん。ふむ。では奥の部屋へ行きましょうか。」


「で、なんでしょう?」

「はい、大金が手に入りまして、そろそろあの2人のために落ち着ける家が欲しくて。」

「あぁ、なるほど。確かにそれはいいですね。予算はいくらほどで?…なるほど。それくらいなら…いくつかいい家がありますね。立地は何処がいいとかありますか?」

「南の方がいいですね。孤児院に近い場所が」

「なるほど。…では、こちらでしょうか。実際に見てもらった方がいいでしょう。案内しますよ」

「ありがとうございます」


 その家は孤児院から歩いて1分くらいの所にあった。日当たりはよく、治安は良さそう。

 庭があり、玄関はなく入ってすぐ部屋。奥にキッチンなどがある広めの部屋ともう1つ部屋がある。

 普段いる部屋が入ってすぐの部屋、食事はキッチンのある部屋、寝室が奥かな。

 庭があるからフェルもゆったり出来そうだ。


「いい家ですね。ここにします」

「ありがとうございます。ではギルドへ戻って契約書と会計をしましょうか。」


 布団やテーブル、椅子などの必要なものなども合わせて、今日稼いだ大量のお金がほぼなくなってしまったが、これで自宅を確保。大きな買い物をした。


 明日は2人に新居のお披露目だな。女将さんにはすごくお世話になったから挨拶もしないと。



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 お読みいただきありがとうございます。

 次回はみんな大好き掲示板回にしようかな?

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