21.ワールドクエスト『動き出す時』Ⅲ

 ○ユーゴ視点


 4ウェーブ目が始まった。今度は雑魚が無し、ベアーだけだが数が多い。

 始まる直前に、もふたから「イベントの気配がするから街へ戻ります」みたいな事を言われたから今はあいつの指示はない。外から見てる分、的確な指示で助かったんだがまぁ仕方ない。


 このイベントの仕様なのかなんなのか分からんが、なんとなく調

 こう動けばいい、敵はこう動く。

 そんな感じの直感が上手く噛み合うのだ。

 さらに言えば、クリティカルも普段より出やすい気がする。

 周りのプレイヤーのレベルは分からないが、強さの割によく動けてる気もする。

 もしかすると、もふたが関わってたり…なんてな。イベントが始まる前に端っこで従魔と遊んでるのを見てほっこりしたが、それだけだ。ただ初のイベントでいつもより動けるだけだろう


「そっちのベアーは任せた!時間稼ぎだけでいい!いのちだいじに、とにかく落ちないことを優先!」

「「「おう!」」」


 もふたの従魔やちっこいのが強くて助かったな。狼の方は素早さと物理攻撃、魔法も長けてて被弾せずに倒してるし、ちっこいのも経験少なそうなのに立ち回りが上手い。


 ベアーは力が強いが俺よりも弱いし、知恵も低いから動きが単純だ。振り下ろしを受け止め、押し返せば大きな隙が現れる。


「はぁッ!」


 よし。次…お?

 動きに慣れたから攻撃する回数が増えたからか、何体かベアーが瀕死じゃねぇか。

 これなら何とかなるな。


「ふはは。街ひとつ落とすのに時間がかかると思ったら、時の旅人が居たとは。」


 …フラグだったのだろうか。


「軽く遊んでやろう。」


 そんなことを言って現れたのは頭に角を生やした…魔族ってやつか?


『ワールドクエスト 動き出す時 が次フェイズへ以降しました。達成条件 ベリアルの分身の撃破0/4』


 ベリアルって、普通のRPGなら後半に戦うような悪魔じゃねぇか!分身とはいえ撃破とかざっけんな!


「くそっ!喰らえっ!」

「ふ、トロいな」


 全力で大剣を振り下ろすが、回避される。


「全員でコイツを倒すぞ!手数で攻めろ!」

「「「了解!」」」


 剣士が斬りかかり、攻撃を盾持ちが防ぐ。盾持ちがベリアルを抑えている所に魔法、弓の遠距離で攻撃。よしよし、いい感じだ。


「はぁッ!」

「ちっ、数だけ多いな、ハエ共が!」

「へっ、数の有利は生かすもんだろ?」

「厄介な。これでどうだっ!」


 ベリアルが魔法陣を展開する。


「盾持ち!頼む!」

「「「ビッグシールド」」」


 闇のイバラが召喚され、縦横無尽に暴れ回る。盾持ちが吹き飛ばされる。


「まずいぞ、今ので前衛の体力がかなり減った」

「ヒールをかけてるが、連続で今のやられたらまずいぞ」

「なら…畳み掛けるぞ!今のやつをさせるな!魔法剣士は魔法剣解放!」

「「「おう!」」」


 剣に魔法を乗せて攻撃力があがる魔法剣だが、燃費が悪く長時間の使用が出来ない。

 俺も出し惜しみ出来ないな。


焔纏ほむらまとい


 継続ダメージを受ける代わりに、ステータス上昇に攻撃に炎属性を付与。


「これで…仕留めるッ!」

「ちっ、捌ききれん!」


 全方向からの一斉攻撃で捌ききることが出来ず、徐々にダメージを与えていき、残り少なくなった。


「これでトドメだぁっ!」


 初撃と同じ全力の振り下ろし。

 だが、周りのプレイヤーの攻撃の対処で避けることも防ぐことも出来ない。


「ぐわァッ!!」


 ベリアルのHPゲージが0になる。


「ちっ…俺様がこんなヤツらに…。だがこれで終わりではないぞ…」


 足元から魔法陣が現れ、次の瞬間には消えていた。


「「「しゃああああ!!!」」」

「やったか!?」

「おいコラ」

「やー、だって定番だろ?」


 はぁー、とりあえず何とかなったか…


『ベリアルの分身の撃破 4/4が完了。フェイズが進みます。プレイヤーと関係者NPCが転移します』


 あぁ、やはりこれで終わりじゃないんだな。

 足元に魔法陣が展開され、ログインする時のような浮遊感を感じ、次の瞬間には何も無い、謎の場所にいた。

 他の区画にいるはずの有名プレイヤーもいるから、今イベントの参加者全員がここに居るのか。


「くっくっく。もう貴様らは逃げられんぞ。ここで一網打尽にしてくれるわっ!」


 そこに居たのは正に悪魔って感じの黒い巨大な化け物だった。


 第2ラウンドってか?




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 お読みいただきありがとうございます。

 今回みたいな戦闘系のイベントだと、主人公じゃなく周りの活躍シーンなので他キャラ視点にしようかな。

 それとご報告。SFのジャンルにて週間ランキングの10位になってました。いつもありがとうございます。

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