38.四回目の遭遇は必然に

 今日もログイン。


「おはよう、みんな」

「「「おはよう(わふ)(ホー)(めぇ)」」」


 さて。今日は何をしようかな。

 店を開いてから、シャルとニナ、たまにユキが店の手伝いをしている。

 クロは一時中断していた冒険者活動を再開している。

 うん、久しぶりに1人でブラブラ歩くか。お供はフェルで。


 ブラブラ歩くのは良いけど、どこ行くかね。

 歩きながら考えるか…。

 そういえば第3の街のスードの近くに海があるっていうのを聞いたな。みんなでバーベキュー…うん、いいかもしれないな。そうなるとどうやってスードへ行くか、だが…まぁエリアボスについて調べないと考えようがないか。

 とりあえず今考えても仕方ないことなので顔を上げる。

 …ん?ここどこだ?考え事をしながら歩いていたとはいえ、この街なら調べ尽くしたと思うんだが、見覚えがない…というか暗っ!かろうじて数歩先は見えるけど…まだ朝のはず…だよな?

 見覚えのない景色と、突然の暗さに戸惑っていると、少し前で青白い炎がポウッと現れる。鬼火かな。

 これも何かのイベントだろうか。

 フェルは特に警戒した素振りは見せないため、ふよふよと進み始める鬼火に着いていく。


 数分くらい歩いたかな?辺りに建物がなくなり、鬼火の光の外側は真っ暗で何も見えないが、目の前に大きな鳥居がある。

 鬼火はそのまま進んでいくため、鳥居を潜ると神社のような建物が現れた。

 外は変わらず暗いが、境内の真ん中に大きく炎が焚かれてあるため、神社の様子がわかる。

 まったく見覚えがない神社、というかこの世界で神社は初めて見た気がする。


 鬼火は奥の方へ進んでいくので大きな炎を避けて回り込んで歩いていると、声がかけられた。


「炎ってのは、人間の生活には必須なモンだ。暗闇を照らすにも、料理をするにも、お湯を沸かすにも、冬に身体を暖めるのにも使える。そうだろう?ん?」


 神社の前には大男が胡座をかいて座り込んでいた。片手に持ってるのは酒か?


「前からおめェには興味があったんだ。気まぐれな風のが気に入ってるってのもあるし、闇のと光のからも気に入られてる。だがおめェはあんまり炎とは接点ねェだろ?料理に火は使うが、その程度だ。だからちょうど人気のない路地裏に入り込んだ所をちょいと転移させたわけよ。オレぁ事情があってここから動けねェんだ」


 唐突に語り出してなんだと思ったら急に俺の話になった。いや、ちょいと転移って。通りで変な空間な訳だ。


「はぁ…。それでどうなんですか?実際に会ってみた感想は」

「はっはっは!オレの正体が分かってるだろうに、媚びるわけでもなく刺々しい言葉を返してきたもんだ。面白いじゃねェの」


 そりゃ最初の語りで何となく察しますとも。炎をテーマに話して、その後に出した「風の」「闇の」「光の」という単語。精霊王同士での呼び方がそれだったからな。

 なんというか、この人(というか精霊王)はまともに対応するだけ気疲れしそうな気がするぞ。


「あァ、気に入ったぜ。人間からは炎を司るからってやけに神聖視されてよ。媚びない態度がオレは好きだァ。それによ、おめェと関わってたら退屈しねェんじゃないかって予感がするんだぜ。そうだな…。じゃあコイツでも連れてけ。上手く使えよォ」


 そう言われて俺に近付いてきたのは、大きな真っ赤な体毛の虎。おお、これはまたサラサラでも、もこもこでも、ふわふわでもないもふもふだ。なんというかな…柔らかいザラザラ?短い毛は硬いイメージがあるけど、この子はちょうどいい柔らかさ。


「君が来てくれるのかい?」

「ガルル」


 こくん、と頷いたので『テイム』。


赤虎せきこがテイムを受け入れました。名付けをしてください』


 お、おう。見た目まんまの赤虎なのね。

 ん…どこかで四神の朱雀を赤虎に置き換えてたとか何とかって見たことある気がするな…。いや、妖怪って書いてあったか…?

 っとと、名付けだったな。今までは種族名の最初と最後を使ってたけど、セキコの3文字だと使いにくいなぁ。


「じゃあ、セキでどうだ?」

「ガルル」


 満足そうに頷き、顔を擦り付けてきたので撫でる。

 うん、体毛短い子は居なかったから新鮮な撫で心地だ。


「うし、懐いたようだな。あァ、自己紹介まだだったな。オレは火の精霊王、レグルスだ。」

「あ、確かに自己紹介のタイミング忘れてました。俺は時の旅人のもふたです。」

「あァ、いい、いい。敬語なんざいらねェよ。ソイツの使い方だが、戦闘はもちろん、移動する時とかに乗ってみろ」

「おお、それはいいな。よろしくな、セキ」

「ガル!」

「んじゃ、元の世界に戻すぞ。」


 気付いたら路地裏に戻ってきていた。

 自分の理由で転移させといて用が済んだら即戻すのかい。

 もともと俺に興味があったみたいだから遅かれ早かれ会うことになってたのか。ま、新しい仲間が出来たし問題ないか。

 左右にフェルとセキを連れて家へ戻った。




 ーーーーーーーーーー

 お読みいただきありがとうございます。

 さらさらの毛並み→フェル

 ふわふわの羽毛→クク

 もこもこの羊毛→ズラク

 ザラザラの毛並み→セキNew


 ザラザラと表現していいのか…と考えましたが、それ以外に思い浮かばなかったんですよね。あれです、柴犬とか撫でたことあります?心地いいザラザラ感なんですよ。

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