第33話
その日は、幸か不幸か、午後からの予約がなかったこともあり、良子は美容室を臨時休業にした。さんざん泣いて、まぶたは腫れ上がっているし、自分の気持ちをコントロールできそうにない。
久美にそう言うと、
「勇さんが帰ってくるまで、よっちゃんと一緒にいるわ。」
と言って、久美が、良子の代わりに、洗濯物の取り入れや、夕飯の支度を引き受けてくれた。
「ごめん、久美ちゃん。」
「いいのよ、よっちゃん。私、これでも、最近まで、専業主婦だったから。」
久美は屈託なく笑った。久美は良子の家の冷蔵庫を開けて、食材を確認し、足りない物は自分の家から持ってきて、楽しそうに夕飯を作り始めた。
夜、帰宅した勇と子供達は、食卓を見て驚いた。
「どうした?何かのお祝いか?」
「すげえ、巻き寿司がある!」
「手まり寿司もある!これお母さんの料理じぁないよね?」
「お吸い物じゃん!久美おばちゃんが来たんだ!」
口々に勝手なことをいいながら、勇や子供達は久美の力作をすべてたいらげてしまった。
良子の様子がいつもと違うことは察しがついているのだろうが、子供達は何も聞かずに自室に引き上げた。
「さてと、聞かせてもらおうか。」
あえて、ニッと笑う勇に、良子はことの次第を話した。
「今度の休みに、一緒に墓参りに行こうや、なあ、そうしよう、いいな。」
勇に言われて、良子はこっくりとうなずいた。
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