第16話

 久美のことを心配しつつ、良子と光代は相変わらず、慌ただしい日々を過ごしていた。三週間がたち、美容室が休みの日、良子は光代を誘って、例のショッピングセンターに行った。

「良子、久美ちゃんに会ったらどうしようかね。」

「おばあちゃん、普通に挨拶しようよ。たとえ二人連れでも。私達は変な目で見るの、やめようよ。」

「何だかドキドキするよ。どうしてかね。」

と、二人で言いつつ、その日は何事もなく、買い物をして、お茶を楽しむことができた。

 良子の車は工務店の駐車スペースにとめることになっている。光代が一足先に、買いこんだ食材を持って車から降りて自宅の方に歩いて行く。

「おばあちゃん、無理しないで。私も持つから。」

良子が後から追いかけると、光代が立ちすくんでいる。

「どうしたの、おばあちゃん。」

光代があごをしゃくった方を見ると、男性らしい人影が自宅の周りをうろうろしている。

 夕方で薄暗いが、良子は目を凝らして人影を見た。

「潔さんですか?」

「はい。突然すみません。」

久美の夫の潔だった。

「ちょっと、お買い物に行ってまして。どうぞ。」

良子は、急いで玄関を開けた。

「少し、失礼します。」

潔はもそもそ言いつつ、中に入る。思いがけない訪問者に光代は言葉が出ない。

「本当に、突然すみません。」

潔は何度も頭を下げた。光代、ただただ、目を丸くしている。


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