第15話

 子供達はそれぞれ自分の分をあたため、良子達の側で食事を始めた。

「別に、立ち聞きするつもりはなかったけど、えらく深刻な様子だったんで。」

勇一が口火をきった。

「ばあちゃん、あんまり心配すんな。」

「そうよ。久美おばちゃん、良識のある人よ。」

長女の麻衣が口を添える。

「あのさ、お茶しただけじゃん。久美おばちゃんだってさ、若い人と話してさ、瞬間ときめいたって、別にいいじゃん。」

次女の由衣ののんびりした口調に、つい皆が、笑った。

「そうだね。私達が久美ちゃんのこと、信じてあげないといけないね。そうだ、もし、妙なことをいう輩がいたら、私達があの子を守ってやろう。」

光代がいつもの口調になり、良子は少し安心した。

 確かに、心配ではあるが、その一方で、久美に幸せな時間があってもいいではないかとも思う。

「本家の連中は久美ちゃんを閉じ込めすぎたな。」

勇が言う通りだった。久美が小学校のPTAの役員をすることさえ、久美の姑は嫌っていた。嫁を外にだすとどうしても家の中のことが世間にしれると反対して久美が困っていたこともあった。

「久美ちゃんが役員してた時は、あたしが娘の奈緒ちゃんあずかってたね。良子も一緒に役員だったんでね。懐かしいね。四人の子供にご飯食べさせて。そうそう、奈緒ちゃんが一番年上で勉強もできたから、あんた達の宿題、全部教えてもらってさ。覚えてるかい。」

という光代の言葉に、子供達が

「奈緒姉ちゃん、どうしてるかな。」

「潔おじさんの反対押しきって結婚しちゃったからちっとも帰って来ないし。」

「でも、予備校の人気講師だろう。俺、ホームページで見た。」

と、口々に言うのを聞いて、久美の心労はいかばかりかと良子は思った。




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