第18話

 翌朝、潔から鍵を預かると、良子と光代は久美の様子を見に行った。久美は二階の寝室ではなく、一階の座敷に布団を敷いて横になっていたが、二人に気づくと、上半身を起こした。顔色が悪くつらそうな久美を見て、光代は涙ぐんだ。

「久美ちゃん、ごめんね。真向かいに住んでいるのに、ちっとも気がつかなくて。」

「おばあちゃん、よっちゃん、迷惑かけてごめんなさい。潔さんが大げさで。」

「久美ちゃん、病院に行こう。私が車で送るから。」

昨日の間に、良子の車で、光代が付き添って久美を病院に連れて行くことは打ち合わせ済みである。

 久美と光代を病院に送りとどけて、美容室に戻り、良子は午前中の予約のお客のパーマとカットをこなし、光代からの連絡を待っていると、勇が美容室に入ってきた。

「あら?」

と言う良子に、勇はニッと笑い、

「お袋の非常召集だよ。もうすぐ終わるから迎えに来てくれってさ。」

「仕事、大丈夫?」

「病院へ迎えに行くだけだから。それより、久美ちゃんにお粥作ってやってくれって。何でも、久美ちゃん、ろくに食べてないみたいだから。」

「それで、お医者さんは何て?」

「メニエールだってさ。お袋がやいやい言って、久美ちゃんの頭部の検査をしてもらったらしいから、確かだろうさ。」

良子はほっとした。勇も同じ思いだったらしく、

「症状はつらそうでかわいそうだけど、とにかく、もっと深刻な病気でなくてよかったな。」

と言った。

「ただ、ストレスはよくないってさ。」

久美から、どうやってストレスをなくせるのか、良子はため息をついた。

「それじゃ、行ってくる。」

勇は美容室から出て行った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る