第6話

 良子の美容室は基本的に朝の九時から午後六時までは予約優先、それ以外の時間は相談の上予約のみ引き受ける。客のほとんどは四十代から八十代の女性で、残念ながら若い娘達は少ない。カットが二千円と安く値段設定しているが、近くにできたショッピングセンターの中にも大手チェーン店の美容室があり、経営は楽ではない。

 今日は六時以降の予約はないので、店を閉め自宅に戻った。自宅は三階建で一階が広めのLDKと光代の部屋、バス、トイレがあり、二階が良子達夫婦、三階が子供達のスペースである。

 光代の希望で一階のキッチンは大きく、食器洗い乾燥機が完備されている。二階にもキッチンはあるが、小さめで専ら、夫や子供の夜食作りに使っている。舅が勇と良子の結婚を機に建て直してくれた二世帯住宅だ。玄関は一つだが、二階にもバス、トイレをつけてくれたのは舅の配慮だ。

 工務店、自宅、美容室と独立した空間があり、おかげで、小さなゴタゴタはあるものの、今までやって来られたと良子は今は亡き舅に感謝している。

 自宅の玄関を開けると光代のはしゃぐ声がする。キッチンに久美がいて手伝っている。

「潔さん、出張だってさ。久美ちゃんも一緒に晩御飯だよ。それから良子、久美ちゃんとこに泊まってあげるんだよ。あんながらんとした大きな家に一人でかわいそうだからね。」

また、光代が一人で決めている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る