第11話
生まれも育ちも違うのだが、こうも気が合うというのは、同じ泉澤の嫁というだけではなく、良子にも久美にも帰る家がないという共通点があるからだろう。二人だけで気兼ねなく久美とのおしゃべりを楽しんだ翌朝、いつもより少々寝坊をして良子は自分の家に戻った。
玄関を開けると味噌汁のにおいがする。
「おばあちゃん、ごめん。遅くなって。」
良子は光代の横に立って弁当のおかずの揚げ物を引き受ける。
「いいよ。二人でおしゃべりしたかい。久美ちゃんも少しは気がはれるといいんだけどね。潔さん、もっと出張してくれないかね。」
と、光代は漬け物を切りながら、相変わらず口が悪い。
良子は久美とは親しいが、夫の潔との関わりはほとんどない。家が向かい合わせだから挨拶はするが、何年たってもそれだけだ。
「潔さんって、口数は少ない人ですよね。」
「あんた達みたいに派手にやるのもどうかと思う事もあるけど、あんなにだんまりも考えものさ。言わなきゃならないことも言わないからね、潔さんってのは。」
「そうね。おじいちゃん、いえ、お義父さん、最初に言ってた。家族になるんだから、お互い思っていることを言おう。そうやってどうしたらよくなるか考えようって。」
「ふん、格好つけたはいいけど、色々あったさ。あんたに直接言えずに、かげで私にぼやいたりね。」
「それは申し訳ないことで。」
いつの間にか良子と光代の漫才のような会話を聞いて勇と子供達が笑っている。また、いつもの朝が始まると良子は思った。
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