第12話

久美の家に泊まり、おしゃべりを楽しんだことは、良子にとってもいい気分転換になり、その後、一ヶ月ほどは、良子は機嫌よく過ごしていた。良子の美容室は、断りきれない依頼がはいらなければ、月曜日が休業日なので、その日はシャンプーやパーマ液の在庫の確認や帳簿のチェックをしていると、それを見計らったように光代が入ってきた。

「おばあちゃん、仕事は。」

と良子がいうと、

「買い物、連れてっておくれよ。」

光代がニッと笑う。

「例のところですか。」

「わかっているなら聞かなくてもいいじゃないか。良子、出かけるよ。」

この人にはかなわないと思いつつ、良子は車のエンジンをかける。

光代が行きたがるのは、自宅から車で三十分ほど西に走ったところに最近できたショッピングセンターである。若者向けの店が多いので、良子はあまり行かないのだが、光代は華やかな雰囲気を味わうだけで満足している。

光代と二人で、子供達のために洋服を選んだり、買ってばかりでは費用がかさむので、何とか自分達で縫おうとして布をさがしたりしたことを良子は懐かしく思い出す。

最近は二人で食材を買い、スイーツを楽しむのが定番である。今日も食材を保冷バッグに入れて、光代と手分けして持ち、レストランやカフェのあるフロアに向かった。

光代が行きたがっているカフェの前で良子は思わず足をとめた。カフェの

中から出てきた若い男性の横に久美がいる。

「急に立ち止まったらぶつかるじゃないか……」

光代も久美に気づいたのだろう。声をのんでいるのが良子にもわかった。


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