第34話

 二週間後、良子は美容室に久美を無料で招待した。午前中は久美だけのためにたっぷり時間をとってある。ヘッドスパだけではなく、カットをして、仕上げはサイドに久美が喜ぶ編み込みをして、などと計画をたてていると、ドアチャイムがなって、久美が入ってきた。

「おはよう、よっちゃん。」

久美と目があうと、良子は照れくさかった。

「この前は本当にごめんね。色々、助けてもらって、本当にありがたかった。」

「たいしたこと、してないわ。それより、どうだった?」

久美はこの前の休みの日に、勇と行った墓参りのことを聞いているのだ。

「行ってきた。誰か先にお参りしてくれた人がいたみたいで、まあ、亡くなってから随分、時間が経ってるのに、ありがたいことだけど……」

口ごもる良子に久美は、

「よっちゃんのお母さんのことを想っている人がいるのね。」

と言った。

「娘としては複雑だけど、まあ、私も今まで墓参りしなかったから……」

 良子は、常に男性の影があった母のことをいまだに嫌悪しているのかもしれないと思う。

「お子さん達には話したの?」

「言った。まあ、こっちは決死の覚悟で打ちあけているのにさ、『おばあちゃん、やるなあ。』とか、『私も年下の恋人欲しい』とか、拍子抜けしちゃった。多分、わたしに気をつかってくれてると思うんだけど。」

良子の言葉に、久美は吹き出している。

「本当に、よっちゃんのところは、いい家族ね。」

「だから、自分の母親のこと、嫌になるよ。本当に、自分勝手で、私のことも考えて欲しかったわ。何が嫌って、常に男の人がいたんだから。」

 しばらく久美は黙っていたが、にっこりと笑って、良子に言った。

「よっちゃんのお母さん、美人だったでしょう。」

一瞬、良子は何のことか意味がわからなかった。

 

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