灯籠
簪ぴあの
第1話
泉澤良子の朝は早い。ほぼ毎日午前四時には起きる。工務店を経営する夫とその手伝いをする息子、美容室に勤める長女、美容の専門学校に通う次女、姑、自分の分の弁当を作りながら朝食も作る。
良子の料理は手早いかわりに雑なところがあり、今日も、せっかく洗ってカットしてザルにあげておいた野菜が、水をきるためにうけていたボールごと、派手な音をたてて落下した。
「やれやれ。あんたの料理は相変わらず賑やかだよ。寝てられやしない。」
とぼやきながら姑の光代が起きてくる。手早く、良子の作ったおかずを弁当箱に詰めながら、
「そうだ。貰い物のかまぼこがあったじゃないか。入れてやろうよ。」
「じゃあ、おばあちゃん、あとお願いね。私、味噌汁、作るから。」
良子は落下した野菜を洗い直し、味噌汁を作る。
「今日もしっかり働かせてもらうよ。あたしゃ、楽隠居なんて夢のまた夢さ。」
「何いってんのよ。息子の弁当の中身が心配でかまいたいだけでしょうが。」
「あんたが夕べ、勇と派手にやってたもんで、今日の昼は日の丸だと思ってさ。」
「それはそれ。食べ物で仕返しはしませんよ。」
と、そこへ
「おい。朝から勘弁してくれよ。」
と、夫の勇と長男の勇一が起きてきた。
「おはよう。今日もいつもの朝がきたって感じ。」
長女の麻衣、次女の由衣も起きてきて家族揃っての朝食が始まる。
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