第24話
良子は光代の様子を見ながら黙ってマッサージを続けていたが、気を取り直したのか、光代は話し始めた。
「勇が高校生の時、久しぶりに小学校の同窓会に行ったんだよ。なかなか外へ出ることができなくてね。子供の学校のことは、気持ちよく出してもらえたけど、実家に帰ったり、友達と会ったりするのは渋い顔をされたね。だけど、勝っちゃんが来るって聞いてね。どうしても会いたくなってさ。遠くにお嫁に行った仲良しが久しぶりにこちらに帰って来るって言って出してもらったんだよ。」
「それで、どうだった?」
「がっかりさ。勝っちゃん、すっかり変わってた。商売替えしてゴミ処理会社を始めたらしくて、羽振りがよさそうだった。おっさんになったのは仕方がないけど、物言いが下品な成金みたいでさ。私は鉄工所で汗だくで仕事をしている勝っちゃんが好きだったんだ。会わなきゃよかったよ。苦労して貯めたへそくりで、花柄のワンピースなんか買って、ほんと、自分でもばかだと思うよ。」
「そんなことないわよ。でも、ありがとね。勇に言わないようなこと、話してくれて。」
「まあそれで、自分の気持ちに決着をつけたような気もするが、その代わり、初恋の思い出が粉々に崩れ去ったって感じだよ。ほんと、何かしらつかんだり、はなしたり、そうやって生きてるよ。」
光代は笑った。
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