第40話

「勇。潔さんは悪い人じゃない。久美ちゃんは潔さんと幸せになりたかった。そうよ。だから、好きになった人がいても家を出なかった。そうよ。」

「どうした、良子。」

「勇。どうして今まで気がつかなかったんだろう。潔さんは体調の悪い久美ちゃんを置いてまで学会に行ったのは何のため?学会にかこつけて奈緒ちゃんに会いに行ったのよ。それが目的だったのよ。だから手土産がどこにでもあるクッキーのセットだったのよ。ひょっとしたら、はなから学会なんてなかったのかも。久美ちゃんを置いてまで行かなければならない学会なんてないわよ。奈緒ちゃんと和解することが大事だったのよ。潔さん、それだけはしなければいけなかったのよ。私、奈緒ちゃんに聞いてみる!」

勇はあっけにとられていた。



 良子の思った通りだった。奈緒に聞いてみると、潔が一人で奈緒を訪ねていたことがわかった。ただ、潔に口止めされていたこともあり、奈緒は久美にその事を言わなかったそうだ。

「ねえ、奈緒ちゃん。久美ちゃんに、潔さんが奈緒ちゃんのところに行ったこと、教えてあげて。久美ちゃん、少しでも、気持ちがなごむと思うの。お節介は承知なんだけど、久美ちゃん、一人で、親戚の人達と闘っているの。少しでも、久美ちゃんの心の支えがあればいいなって。だって、久美ちゃん、潔さんが奈緒ちゃんの結婚を反対したままだって思っているから。」

 わかりましたと、奈緒は良子に言ってくれた。



 一週間後、珍しく、良子は勇と連れだって光代の墓参りをした。本家の墓を見て良子は嬉しくなった。

「勇、見て見て!」

潔の墓に白い菊が供えてあった。

「おばあちゃん、これでいいよね。」

良子は光代に語りかけた。




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灯籠 簪ぴあの @kanzashipiano

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