悪役令嬢は作戦会議をするようです
「なんか色々と突っ込みたいことが多いんですが…」
「いいですよ?なんでも聞いてください。」
全ての話をするのには案外時間がかからなかった。あんなにも苦しかった思い出達が今はなぜだかスラスラと言えた。
(今までの周回がこの私を作っていて、それは否定したくないって考えたんだもんね…)
「最初の質問なんですが...おととい、なんかありましたよね?」
「えっ!?」
(おいおい、スィーピア隠せてないじゃん!!)
「えぇありました色々と...なぜわかったんですか?」
「この間別れる時、僕一つだけ質問したじゃないですか。」
「あっスィーピアとフィルのことですか?」
あの日別れる際に、使役精霊がいるか聞かれたので、私はスィーピアとフィルについて少し話していた。
「そうです。あの時展開された独特な魔力はすぐわかりましたよ。スィーピアさんのものだと。」
「でもなんでわかるんですか?」
「におうんですよ。」
(におう?)
私は不意に自分のことを嗅いでみた。しかし何も感じなかった。
学校でもそんなことを習った記憶はない。
「あぁこの事はあまりよく知られていないんですよ。強く感じてしまう人もいれば、鈍い人もいる。聞くところ、強く感じる人の中には、魔力の匂いで運命を感じる人もいるようですよ。」
「あっ知ってます。」
私は知っていた。魔力の運命に引き寄せられる人を。
「もしかして...」
「えぇそうです。エリオット殿下。」
そう、どの周回でも上手くいかなかった一番の原因はその運命とやらのせいだろう。
(だって、あの子は来るまでは、エリオット殿下もそこそこ私と上手くやってたし...)
『そう運命なのよ問題は、』
「レダ様!!」
「エト!」
「久しぶりね!!シャル。」
上から声が聞こえると共に、エトが姿を現した。
相変わらずの可憐さに私たちは息を呑んだ。
「なんか、前より綺麗になったねエト。」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。しうなの!力が戻ってきてるっていうか...そうだ、作戦会議してるんでしょ?私も混ぜて!!」
「いいけど、なんで急に?」
そう聞き返した私に、エトは少し顔色を変えた。どこか悲しげな表情になったのだ。
「よく聞いていて。私はシャルが好きよ。だって今のシャルがあるのは、私が神の仕事を放棄してまで一方的に君のことを気に入ったからだから、だから、私はシャルを愛している。これはっ」
「分かってる。そんなのずっと前から知ってるよ。」
私は、エトに抱きかかった。力を取り戻しつつあるエトは少し背が大きいので本当に飛びかかる勢いだった。
でも、私はそうしなければならないと思っていた。
エトの顔は、悲しみよりも、どこか恐れを感じていたから。それは、私が家族に正体がバレる時と同じ感覚のような気がしたから。
「大丈夫だよ。この先、エトがどう行動しても、私はエトを信じてる。私をエトが信じてくれたように。」
「...シャル。私ね。シャルを苦しめてしまう立場になるかもしれない。これから、私はリリアーネ側に嫌でもつかなきゃならないから。」
そうだろう。元々、リリアーネは光の巫女としてあの学校に来るのだ。
(というか、光の巫女じゃなきゃあんなにもおバカちゃん学校に入れるわけないじゃん。)
「あの〜すいません。僕のこと忘れてませんか?リリアーネというのは確か、光の巫女として学校に入学するという方ですよね?」
置いていかれていることに気がついたイアンツィーが話に入り、私はエトから離れた。
「そうです。不思議なことに、彼女がどんな失敗をしてもエリオット殿下は笑って許していた。それどころか、全校生徒のほとんどが彼女の味方だった。彼女が言うことが全て正解で、私はほとんどの周回で、彼女に悪だと言われ。学校から追い出されました。」
そう、私はよく学校の話をしていたが、実際は1年間も行けたことがないのだ。
(まぁでも、入学試験は一応学年首席で通ったから、通えていたらそこそこ頭がいい自信あるんだけどな...)
「何度聞いてもおかしな話です。僕は一応エリとは友人なのですが、彼はあまり失敗笑っていいよなんて言う人じゃありませんよ。」
「それが運命のなの。誰にでも好かれるような魔力を持って生まれる。それが巫女よ。だから作戦会議が必要なの。彼女はきっと今周期も学校に来るのだから。」
エトがそう言い切ると、そこには沈黙が生まれた。
リリアーネの魔力が原因なら、対処法が分からない。味方である。イアンツィーですら、敵になってしまう可能性があるのだ。
「でも、どうして私の家族は大丈夫だったのでしょうか?」
私がふとそんな疑問を言うと、エトはガバッと椅子から立った。
「そうか...それよっ!!」
「どういうことですか?」
イアンツィー同様私もちんぷんかんぷんだ。
「シャルとの絆がリリアーネに対抗出来る手なのかもしれない。」
「ちょっと待ってください。前周期で、シャルさんの家族はシャルさんの味方だったのですか?というかシャルさんの家族って!!」
「えっイアンそこから?シャルが全部話しきったと思ったからここに来たんだけど...シャルどういうこと?ちゃんと話してないでしょ、だから思ったよりスラスラ終わったとか思ってんだよ!!」
(あぁバレましたか...)
「あはは...。」
私はつまみつまみ話したので、家族の話すらもまともにしていなかったのだ。
「そうですよ。私の元の名はシャロル・エト・ヴァンビルゼ。あのヴァンビルゼ公爵家の令嬢でした。まぁどの周回でも私の家族ごとリリアーネに潰されかかりましたが、彼らは最後まで私を守ろうとしてくれました。特にジルお兄様とミッシェルは...」
「シャル...ごめん。無理に聞き出すのは良くなかったね。イアンにちゃんとシャルのこと知ってもらいたかった。ごめんね。」
「僕もすいません感じ取れなくて、シャルさんが何か隠しているようには思えなかったので...」
(そうか、私はめんどくさかったんじゃない。思い出したくなかったんだ。...でも)
私は暗くなった雰囲気を明るくさせるような元気な声で
「確かに私は今までほんっとに辛いことばっかだった!!口にしてしまうことで、思い出してしまうのが怖かった!!でも、今は違うっ!悔しいっ!!あんな奴に苦しめられて!!家族まで失って....」
「シャル(さん)...」
「だから!!全部守る!!今度こそっ私からは何も奪わせない!!」
二人が見守る中、私は高らかにリリアーネに宣戦布告した。
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