悪役令嬢は別れを告げるそうです
「ねぇちゃん達っ!!そっち行ったぞ!!」
「「了解!!」」
春も近ずき、森の木々には多くの蕾が色ずく中、私はカリーとエンディーの姉弟3人で狩りに出かけていた。
というのも....
「なぁねぇちゃん達....」
「「何?」」
「最近太ったんじゃね?」
そのカリーの一言に、場の空気は凍りついた。
確かにその通りだろう。
ソリアにドレスを買って貰った後、私もエンディーもまた部屋に引きこもっていた。さらに言うと、エンディーの本棚にはまたまた本が増えていた。
つまり、運動不足だった。
貴族がほとんどの学校とはいえ、野外活動等、体を動かす授業だって沢山ある。このままではダメだ。ということで、今日は3人で狩りに行くことにしたのだ。
「シャルっそっち行ったよっ!!」
ただいま戦闘中なのは、狼に角が生えた魔物だ。エンディー曰く、『ガードサンダーウルフの中級型、またの名を一角雷狼』だとか何とか....まっそんなことはどうでもいいので、とりあえず狼と私もカリーも呼んでいる。
「ララっ!!」
『まっかせなさ〜いっ!!』
狼が魔法攻撃をすると共に、水精霊のララと狼を水の膜に入れる。これだけで勝手に狼は自分の雷魔法に感電し死ぬ。
(この作戦を考えたのもエナねぇちゃんなんだよね〜)
私は、カリーとエンディーが上手く狼を私の所に追いやるのを待てばいいという何とも楽な討伐だった。
「ふ〜...ステータスオープン!!おっレベル上がってる!!」
シャロル(シャロル・エト・ヴァンビルゼ)
レベル:23
体力値:230
攻撃力:46
魔力値:5700/6900(最大魔力値100000)
スキル:短剣5(MAX)
追撃 5(MAX)
水魔法 10(MAX)+無詠唱5
風魔法10(MAX)+無詠唱3
火魔法10(MAX)+無詠唱6
称号: 神の愛子(いとしこ)
時空放浪
彷徨う者
スライム狩り
獣狩り
精霊の瞳
使役精霊: 「ララ」水 中級精霊
「ナナ」風 中級精霊
「ノノ」火 中級精霊
「私も上がった、これでレベル50。」
「俺もレベル47になったな〜」
(えっ何この敗北感...)
カリーとエンディーとのあまりのレベル差に、私は唖然とした。
「まっカリーに関しては、僕のおかげなんだけどねっ☆」
「どういうこと?」
しれっとカリーからフィルへと人格が変わっていることに、最近はもう驚かなくなった。
「僕の元々のレベルをカリーの体に上乗せしてるってこと〜」
「それって....」
「ずるじゃねーかんなっ!!てか、シャルねぇちゃんだって、使役精霊3匹も使ってんだろっ!!それに無詠唱までできるようになって、それにどっちかって言うと、エナねぇちゃんの方がおかしいだろっ!!あんなにぐうたらしてんのに。」
(うっ確かに...)
私はいつの間にか無詠唱魔法が使えるようになり、カリーがフィルを使役?しているとしたら私だってしていたのだった。
「ふっふっふ〜私は母さん達と共に旅をしていた経験があるからね〜」
1番レベルが高いエンディーが誇らしそうにそういった。
「というか、カリーだっておにぃちゃん時代があるはずじゃない?」
(確かに...私が産まれるまでは四人で旅をしていたんだから、エナねぇちゃんよりカリーの方がレベルは上のはずなのに...)
「あぁそれが、この姿になってからまたゼロからになったんだよな〜」
「.......」
(やっぱり、私のせい...)
カリーがおにぃちゃんだったという事実を知ったあのピクニックの1件から色々あって忘れていたが、私がカリーを一度死なせてしまった事実は消えない。
「あっ....おにぃちゃんとして今から言わせてもらうけど、シャルのせいじゃないからな。」
「えっ?」
気まずい空気が漂う中、カリーはおにぃちゃんとして泣き出しそうな私に話しかけてきた。
「シャルのせいじゃない。シャルのせいじゃない!!シャルのせいじゃない!!!シャルのせいじゃっ」
「ちょっ、何回言うの?!」
「シャルのせいじゃない!!シャルのせいじゃない!!!シャルのせいじゃっ」
「えっ!?エナねぇちゃんまでっ」
狂ったように何度も何度も『シャルのせいじゃない』を繰り返すカリーとエンディーにいつの間にか、私の顔は笑っていた。
「何回でも...。シャルが自分のせいじゃないって思えるまで、何回でも言うよ。」
「カリー...おにぃちゃん。」
「私も、これからはカリーの....おにぃちゃんの分までシャルに言うからっ!!」
そう言い切ったエンディーは私にガバッと抱き着いた。
(そうか...学校は全寮制だもんね。当分はカリーには会えないんだ...)
「エナねぇちゃん......カリーおにぃちゃん、ありがとう。大好きだよっ!!」
「私(俺)も大好きっ。」
私はエンディーとカリーに左右から抱きしめられ、改めてこの兄弟を好きだと実感した。
グウァアアア
いい雰囲気もつかの間、魔物達の声によって私達は離れ、それぞれの戦闘態勢に入った。
「行くよっ!!」
「「了解!!」」
_._._._._._._
「シャル、上手くやっているわ....私も頑張らないと、ね」
真っ白な空間の中、エトはシャルの様子を見てそう呟いた。
《規約放棄を要求する。》
エトのその言葉と共に、エトの雰囲気は変わった。真っ白に白い髪は、漆黒へと変わり、白く輝いていたワンピースは、黒いオーラに包まれた。
いつかの時のように、白い空間は砕け散り、真っ暗な空間がエトを包んだ。
《我が名、レダ・アラクネ改め、エトとして、規約放棄を要求する!!》
場が整ったところで、先程よりも強く、高らかに、エトは宣言した。
ーーーーーーーーッ!!
「うっ...」
エトのそれに答えるように、大きな耳鳴りがなった。エトはその耳鳴りに崩れそうになるが、何とか耐え、誰かを待ちわびるように真上を見た。
《【問】汝、それが答えなのか?》
感情のない声が、エトに降ってきた。
声の正体は分からない。エトは神とは言ったものの、この声の正体に比べれば、なんの力もない神だった。
《【疑問】これが汝が望んだ世界だというのに?》
やはり感情はない。しかし、どこかエトを諭すような感じがした。
《そう。これが我の、、、私の望んだ世界の筈だった。》
《【忠告】それで十分。汝は貪欲である。》
《それをっ貴方がいいますかっ!!》
今にも泣きそうだったエトの表情は、神の言葉と共に、怒りへと変わった。
《貴方は何をしたかっ千年前も今もっ貴方が、貴方のせいで苦しんでいる人の子が沢山いるのですよっ?!》
《......【正答】それが、我の役目である。》
《........っ》
エトはもう無駄だと感じた。
千年前、平和だった世界に戦争を起こしたこの神に、
現在、光の巫女という存在で世界の運命を乱すこの神に、
一体何を祈ると言うのだろうか。
そんなものはないのだった。
《世界を....人の子をわざわざ苦しめる神などに、私はならない!!》
《【理解】そうかそうだったな。汝は、世界を救うために犠牲になった
《規約:我がエトの名の元。対象:□□□。この戦争、千年前の戦争の終結。5種族間の戦争禁止。神の直接的な世界への干渉禁止。を要求した。》
《規約:我が名の元。対象:エト。汝の存在、またそれ以外の4人。5種族の長の存在を引き換えを要求した。....【最終警告】本当に良いのだな?》
何を今更と、エトは姿も見えない相手のその言葉に被さるように
《ええ、》
と。
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