悪役令嬢は名前を呼ばれるそうです(3)
「シャロル...か。そういえば、馬車で引きそうになったあの少女も、同じ名前だった。」
あの黒髪に月のようなあの目、どちらもヴァンビルゼ家の血でしか見たことがないものだ。だからこそジルベルトは、シャロルの名前を聞いてしまったのだ。
「でもどうして、エリまで彼女のことを...フカ...ミリァー...我が身よ変幻せよ。...ん〜確かにあの少女も成長すると同じ感じになる、か?」
ジルベルトは、夜会前に冗談で女装した姿になり、姿鏡を見つめていた。
「彼女はもうちょっと髪が長かったか...それで髪をこう...ハーフアップで...」
「おっお兄様.......」
「....みっミッシェル!?、ちっ違うんだ。これはその...」
ジルベルトはいつの間にか部屋にはいって来ていた。妹、ミッシェルに自分の女装姿を見られてしまった。
「いっいえ。ノックもせずに入って。ごめんなさい!!あっこのことはお母様やお父様には内緒にしておくから...じゃ!!」
「ミッシェル、まっ...」
ミッシェルは早口で、スラスラと言ったあと、慌てたように部屋から出ていってしまった。
「..そん、な。....はぁ〜」
明らかに妹に勘違いをさせてしまったジルベルトは、その場に崩れ、立てなくなっていた。
『ジル、すまないが急ぎ用がある。来てくれ。』
そんなジルベルトに、休むこと無くそんな通達が届いた。
「はっ、元を辿れば、全てエリのせいじゃないか?」
ジルベルトはそんな開き直りをし、これは自分をいいように使うエリオットに愚痴を言うしかない。と考え、急いで城へ向かうのであった。
_._._._._._._
「それで、ジルが来る前にひとつイアンに聞きたいことがある。」
「何です?」
「それが...」
バンッ
執務室のドアが勢いよく開けられ、エリオットとイアンツィーは自然とそのドアの方へ顔が向いた。
「エリオット殿下!!何か、ご用で、す...か?ってイアン!?」
「久しぶりですね。ジル。」
ジルベルトはエリオットへ色々言ってやろうと思っていた気持ちを忘れ、目の前に現れたイアンツィーの顔を見て嬉しそうに笑った。
「速かったな。ジル。」
「えぇ、急ぎの用事なのかと思ったので...で?なんの話をしてたんだい?」
「それは....」
「シャロルという少女のお話じゃありませんか?」
『シャロル』という単語に、エリオットもジルベルトも少し驚いた顔をした。
「違いましたか?」
何も言わない、エリオットにイアンツィーは違うのかと首を傾げた。
「いや、そうだ。ではやはり、イアンが街で会っていたのはシャロルなんだな?」
「「えっ!?」」
「どうして知っているです?」
「どういうことなんだ?」
イアンツィーは何故、自分とシャロルが面識がある事を知っているのかと疑問に思い。
ジルベルトはそもそもシャロルが何者なのかと疑問に思っていた。
「いや、ちょっと見かけたんだ。街の視察の時にな、」
「そうだったんですか...彼女とは..」
「ちょっと待って!?シャロルってもしかして、あの平民の、あの黒髪に月のような瞳の女の子?」
「あぁそうだ。」
「そうですよ。」
(どういうことだ?2人ともいつの間に彼女と面識を?)
ジルベルトがよく分からないまま、エリオットとイアンツィー話を続けた。
「
「シャル..?、ちょっとした?」
シャロルの愛称を誇張しながら、友達だと言うイアンツィーにエリオットは何故か少し苛立ちを覚えた。
「ちょっとしたという部分はシャルさんとの秘密なのでお教えできません。」
さらに煽るようににこりと笑みを作りながら、イアンツィーはそう言い切った。
「そうか...俺は、シャロルのような人物が夢に出てくるんだ。だから、シャロルという人物が気になったんだ。それだけだ。」
エリオットは、あくまでもそれだけだと、シャロルにはあまり興味はないと言った様子で話した。
そして、自分が
「えっと〜私もそのシャロルという少女とはであったことがあるんですが....」
「そうなのか?」
「そうなんですか?」
それは初耳だと、ジルベルトの話に興味を示した。それからジルベルトはシャロルを馬車で引きかけた話をした。
「じゃあ私たち三人とも、同じシャロルという少女を知っているってことだね。」
「確かに...」
「そうなりますね。」
「って、そのシャロルさんの話じゃなくて、今日は久しぶりに会う、イアンの話が聞けると思ったんだけど??」
話がどんどん、『シャロル』の話にズレていくのに、ジルベルトは終止符を打った。
「そうですね。じゃ少し今度立ち上げようと思っている『魔法の塔』のお話をしま....」
《神官長様、至急大神殿にお戻りください。》
突然現れた、水色の伝令鳥によってイアンツィーの話は途切れた。
「あ〜ごめん。どうやら行かないと行けないみたいです。」
「いや、忙しい所を引き止めて悪かった。」
「また学校で、イアン。」
三人は軽く挨拶を交わし、彼らのお茶会はお開きとなった。
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