悪役令嬢は名前を呼ばれるそうです(2)


 リリアーネが初めて城に来る日の朝、獗獄けっごく家ではまたまた揉め事が起こっていた。


それでゼンどうして私がスィーヤム護衛をホゥソゴする理由になるのよ二ーヤンマー?!」


それはナァシお前がニィヴこの間サボったからにハン、ランドゥー決まってんだろユン、ジュウディング?そんくらい考えろシャグシャグ、カン。」


 お互いがお互いの赤いマフラーを掴んだまま、喧嘩をしていた。


「まぁまぁ二人とも〜」


 その間で、場違いな程和やかに、茶をすすりながら正座をする者が一人。


「「何だってクィンザイ!?」」


「あぢぃぃいい!!」


 二人の怒りは迷うことなく、柳風りゅうふうへと向き。柳風が茶をまたすすったところで、湯のみは二人のくないによって割られた。

 もちろん湯のみの中のアツアツのお茶は、柳風の太ももへと落ちていった。


「二人とも!!酷くない!?」


「「父上が悪い。フィクン、ヘンファイ」」


 敵対する相手ができた時だけは、とても息ピッタリに合わせはっきりと柳風を罵った。


「うっ...分かったよ〜消えるね〜」


「「あっ....」」


 さすがの素早さで、瞬きをする間もなく、目の前から柳風は消えていた。


「「はぁ....」」


 自分の父の実力にはまだまだ追いつけない事を、知らしめられた二人はそんな柳風を追いかける事を諦めた。



 そして結局、今回の護衛はあざみがすることとなった。


「あ〜あ〜、もうちょっといたかったのに〜、てか、エリオット殿下?だっけあんまタイプじゃなかったな〜、」


 そんな上から目線なことを呟くリリアーネの後を、怒りを漏らしながら、薊はついていた。


「てかっなんで今日は柊風じゃないの?」


 急にくるりと薊の方を向いてそう、薊に投げかけられた。


(知らないわよ。私だってあんたの護衛なんてしたくないってば...)


 薊はそんな悪態をつきつつ、彼女なりの頑張りで言葉にすることは避けた。


「まっいいや〜...それにしても、神官長様めっちゃ怖いよね〜もうちょっと優しくしても良くない??」


お前が馬鹿だからだよ二ーシィ、グーバイチ。」


「ん?なんか言った?」


 思わずポロリと出てしまった、言葉を誤魔化すように、薊は全力で首を横に振った。


 一方その頃、執務室では。


「はぁ〜疲れた〜。ありがとう、エリ。彼女といるとやっぱり疲れるんだよね。」


「だろうな。それで、イアン。裏口入学はどうにかしとくとして、イアンも新学期からは学校に戻ってくるんだろう?」


「まぁね。学校ではやることもあるし…」


 何かありげに、イアンが目線をそらすのが気になったが、それよりエリオットには聞きたいこともあった。


「そうか。なら学校が始まる前にジルも含めて集まらないか?色々聞きたいこともあるしな。」


「う〜ん....分かったじゃ。今からジルを呼ぼう。実はここのところ忙しいんだ。」


「、そうか?じゃ、ウィル...コネクト...ジルベルトへの伝令を頼む。」


 エリオットが連絡魔法を詠唱すると、エリオットの手には金色の小鳥がちょこんと現れた。


「ジル、すまないが急ぎ用がある。来てくれ。」


 そう小鳥に話すと、小鳥はすっと消えてしまった。

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