悪役令嬢は迷子になるようです(3)
群青色の髪の少女に引っ張られながら数分がたった。
「....ねっねぇどこまで行くの??本当にあってんの?」
「.....。」
私の声がまるで聞こえていないかのように、完全なる無視を私はくらっていた。
(....きっ気まずい...)
私はただ足音を鳴らしながら歩いていると、私はあることに気がついた。目の前の少女の足音が聞こえないのだ。
以前も思ったが、この少女全体を通して気配が薄い。いや、ないと言っても過言ではなかった。
(んーなんかの隠密だったりして.....なんてね〜)
私は少女の正体を知りたいと思いつつも、また無視を食らうのは嫌なので、そのまま黙って少女に引っ張られた。
コツ、コツ、...
私が少女に質問をしなくなったせいか、この空間での音は私の足音だけとなった。そのおかげか、誰かがこちらへ歩いて来るのを聞き取れた。
「誰か来っ....」
突然少女に口を塞がれ、私は少し抵抗した。がしかし、少女はまたもやその小さな体から出るとは思えない力で私を廊下の壁に押さえつけた。
しばらくして、私が暴れないことを理解したのか、少女は手を話すと、人差し指を口に当て『静かに』と口の動きだけで伝えてきた。
(何もあんな押さえつけなくても...)
私はヒリヒリする右手首を左手で擦りながら、足音がする方を向いた。
「....《獣化解放。『聴音』『隠密』》」
「っ!?!?」
少女がポツリと呟くと、少女の頭からはピンとたった耳におしりからはフサフサのしっぽが生えていた。そして、私と同じように足音の方を見つめるその紅の目は炎が燃えるように煌めいた。
(この子、獣族だったの!!....まって確かさっき...あっ)
ずっとどこかで見たことがあると思っていた見た目は、リリアーネの後ろにいた騎士とその風貌が同じだった。
「そこにいるのは
少女のその姿に驚いて、じっと見つめていたら、足音の正体がすぐ目の前にまでもう来ていた。
(.....っ!?)
正体の方を見て、私はまた驚いてしまった。黄金の髪とエメラルドの瞳。エリオットだったのだ。
「私の隠密、見破れるの、エリオットくらい。」
どうやら薊と言うらしい少女は、相手が皇太子なのを感じさせないぶっきらぼうに言う。
「フッ相変わらず生意気だな。薊。」
「王家と四大公爵家、平等関係。1000年の歴史。」
「あぁそうだな。俺らは平等な関係を保ってるからな。」
「触るな。気持ち悪い。」
薊はエリオットが撫でてくる手を払い除けた。そんな薊はにこやかな表情を崩さずにいた。
(....どういう関係?)
現在平民である私が口を挟めるはずもなく、ただ状況を見守った。
「...少しくらいいいだろ。獣族の毛は手触りがいいんだ。」
「なら、父上、触れ。」
「ハッ父を売るとは、いくら
「.......。」
「....まっいいや、それじゃ俺は行くよ。さっさと出てけよ〜」
緊張感のある沈黙の後、エリオットはそこを去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます