閑話 母さんは顔が広いそうです

カランカラン


「あっ!!ソリアちゃん、いらっしゃい!!」


「えっソリアさん??」


「おぉーソリア、よく来たな!!」


 ソリアがその店に入ると彩り取りの美しい男性が彼女を迎えた。店の内装も煌びやかで、ソリアは慣れたように店の奥のカウンター席へと向かった。


「皆元気そうね。カインはいるかしら?」


「いるよ〜、カイン!!ご指名だよ〜!!」


「は〜い!!」


 ここは花街にある男娼の店。しかし、奥から出てきたのは、とても美しい女性の姿だった。


「....何?今回は、」


 カインと呼ばれたその者はソリアを見てさっきたのか、早速要件を聞いた。


「ふふっ...」


「何急に笑ってんの?気持ち悪い。」


「ごめんなさいね。だって...」


 その美しい顔から出ているとは思えない、低い声で話すカイルをいつ聞いても慣れない。

 そんなことを本人に言えるはずもなく、ソリアは本題に入ることにした。


「....それでね。私の子どもたちにドレスとワンピースを数枚デザインして欲しくて...」


「へぇ...面白いじゃん。、で、何?いつ着るドレス?」


 ソリアの笑われてツンっとしていた様子から一転、カイルはソリアの話に興味深々だった。

 カウンターを挟んで、二人は悪巧みを始めるように笑いあった。


 _._._._._._._


 ー数日後ー


「エナ、シャル!!さぁ行きましょう!!」


「「どこに??」」


 ここ最近の上機嫌の限界状態でソリアは私とエンディーを家から連れ出した。


(まぁ最近また引きこもり状態だったしね…)


 勉強を理由に家の事をほとんどカリーに任せ、私とエンディーは家でダラダラと過ごしていた。


 ソリアの力は、さすが元Sランク冒険者といった強さで、振り解けそうになかった。

 ソリアも絶対逃げ出すと分かっているのか、力を弱める気配もない。


「おいっ離せよっ!!聞いてんのかぁ!?」


(隣で逆ギレ状態のエナねぇちゃんはどうにか逃げようとしてるけど...)


 そんな諦めモードの私ははたと気がついた事があった。

 この道は以前エンディーとソリアを追った場所ではないかっと。


「エナねぇちゃん、この先って...」


「何!?....あっここってまさか!!」


 辿り着いたのはこの前突き止めた男娼を売る店。


 カランカラン


 躊躇いなくその店に入ったソリアに連れられ、私たちは入ってしまった。


「おぉーソリア来たか〜でそこのガキが..」


 店に入った瞬間、大柄な男が話しかけてきた。


「そうなのよ〜めっちゃ可愛いでしょ??」


「綺麗な子だね!!さすがソリアちゃんの娘!!」


 ソリアに押し出されるような形で、ソリアの前に立たされると、今度は小柄な少年が話しかけてきた。

 その後も、何人もの男たちに紹介され、その間ソリアは楽しそうだった。


(何しに来たんだろう...)


『ほんとそうだなー』


『暇だねー』


 私は公爵令嬢時の笑顔を顔に貼り付けながら、目は遠くを見つけていた。

 私の使役精霊たちも、この状況がつまらないらしく、精霊が見えていない事をいいことに、男たちの髪を引っ張ったりと遊び初めていた。


(あれ、見えていない人からすると、急に頭皮が痛み出すっていう恐怖の状況なんだよね…)


 少し前にドムリがやられていた事を思い出して、少し可哀想に思った。


 私ですらこの有様な状況で、隣を見れば爆発寸前のエンディーの姿があった。


(こわっ...)


「.......。」


「ん??どうしたのエナ?」


(あー母さん、そこ聞いちゃいけないやつ..)


「...うぜぇっつってんだよおじさんっ!!母さんもごちゃごちゃ言ってねーでさっさと要件話せよっ!!」


「おっおじさん....」


 案の定、先程の快活な笑顔は激怒の顔に変わり、今にも目の前の男たちに殴りかかりそうな勢いだった。

 そうでなくとも、おじさんと呼ばれるとは思っていなかった男たちはショックを受けて静かになってしまった。


「今日は何の騒ぎだ??ってソリアか。でそちらが例の子達、か。」


 奥のカウンターから聞こえてきた声は、とても低くかった。しかし、カウンターにいたのは高身長に長い紫髪の美女だった。


(今度は誰!?)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る