悪役令嬢は作戦会議をするようです(2)
「よしっ!!じゃあシャルの絆がどこまで深いとリリアーネから守れるのかを考えていこう!!」
「「おーーー!!」」
「ってちょっと待ってください。」
私は二人と共に挙げたこぶしを一旦下げた。
「ん?どうしたの?」
「ずっと気になってるんですけど…私そろそろ夕飯の支度が...」
「その事でしたら初めに話したじゃないですか。時間ならたっぷりあるって、シャルさんが思っているよりここの時間の流れはゆっくりですよ。」
(時間の流れがゆっくり...)
「ここを誰が管理していると思っているんです。シャルさん。」
私が疑問に感じていると急にイアンツィーは自慢げになった。
「誰って、ドレッディーン家ですよね。」
「えぇ、ですが正式に言うと、ハイエルフたちの住処なんですここは、あっハイエルフって言うのはおばあちゃっ」
バコッ
目に見えない速さで、何かがイアンツィーの顔をぶっ叩いた。衝撃でか、イアンツィーは椅子から落ち倒れた。
「えっ大丈夫ですか?」
「うわ〜おっかないわ。ハイエルフって。」
(ハイエルフって本当、なんなの?なんかがすっごい速さで飛んできたけど?えっイアンツィーさん本当に大丈夫?)
「大丈夫じゃよ。こんなものでは死なぬ。なぁイアン坊。」
「えっ?!」
気がつけばフードを深く被った者がいた。
フードを深く被っているため顔はよく見えない。背丈は私よりも低く、話し方から老婆のような気がした。
「もちろんですよ。おばあ..」
「もう一度殴られたいようだな。」
「カミラ様またご冗談を。」
カミラと呼ばれた老婆?はカミラと呼ばれたことに満足したのか、くるりと私の方へ体を向けた。
「ふむ...お主は。」
「シャロルと言います。」
「名前なんか聞いちゃいないよ。...まぁいい嬢ちゃんよく聞きな。ここがハイエルフの住処だってことはドレッディーン家でもごく一部の物にしか知られていないことだよ。それをあの馬鹿はペラペラと.......いいかいよく聞きな。」
カミラは私に近ずき、ぐいっと私の腕を引っ張り、視線をカミラと同じにさせた。そのおかげで、カミラのフードの中が見える。その顔は不思議な文様が刻まれた面をつけていた。
相変わらず表情は読めない。しかし何故か、敵意はないように感じた。
「嬢ちゃん。イアン坊の
「はっはい!!」
「それがどういうことなのか、嬢ちゃんも分かっているだろう。」
分かっている。
「さっき、高らかに言ったね。全部守る...と。」
「はい...。」
カミラはどこかたんたんと、私に諭すように話す。その緊張感のある話し方は、カミラの後ろ、エトもイアンツィーも不安そうに見守っている。
「言うのは簡単さ。だが言ったからには、やり遂げろ。イアン坊をよろしくな。では、足掻きな嬢ちゃん。その
言うことが終わったのか、カミラは私の返事も待たずに消えてしまった。
最後、カミラは笑っているように思えた。
「はぁ〜〜!!緊張したぁ!!カミラって、ほんっと昔から威圧感ありすぎ!!!」
カミラが姿を消すと共に、エトは脱力して私に寄りかかった。
「あれっ?レダ様カミラ様とお知り合いでしたか?」
「そうね。大戦時代の千年以上前からの仲よ。」
(えっ...じゃカミラ様ってめっちゃ年いってない?)
カミラもそうだが、エトもそんなに長い間生きていたと知ると、私たちとは違うっと思ってしまう。
「確かに大戦時代の話はよく話しますが...まさかお知り合いとは...。」
「まぁ色々あったのよ〜ってそんなことどうでもいいの!!カミラがきて中断しちゃったけど、この図書館はカミラ率いるハイエルフによって時間がゆっくりと流れるようになっている。であっているわね?」
「はっはいそうです。」
「どういう魔法なのかはよくわかんないけど、まぁそんなことだから、まだシャルは帰りませんでいいね?」
「はっはい。」
どんどんと話を進めたがるエトに私たちは返事をするしかなかった。
「じゃあ検証しましょうよ!!シャルの絆作戦!」
パチン
楽しげにエトは指を鳴らすと、そこにはいくつもの人形が現れた。
「うわっ!!なっなんですかこれは!?」
「すっごい数の人形...。」
私は現れた人形をまじまじと見てしまった。
「あれ?」
「シャルはもう気がついたみたいね。そうこの子たちは、これからリリアーネが関わるであろう主要人物の等身大人形なの!!」
やはりそうだった。現れた人形は、女の子が持っているような可愛らしいものではなく、肌の質感まで同じなんじゃないかと思われるようなものだった。
(やっぱり...よく見ると知ってるような顔が...)
「...ジルお兄様。」
知っている顔がないか見回せば、そこにはジルベルトの顔もあった。
「これをどう使って、検証するのですか?」
「見ててね。」
パチン
そこにリリアーネの人形が現れると共に、人形たちの腕には紐のようなものが結ばれ、リリアーネに集結していた。
「これは...?」
「運命を具現化したものよ。」
運命の糸で結ばれている。とかよく恋愛小説で見かけるが、実際の糸はとても禍々しいものだった。
そして私とイアンツィーの腕にも同じように禍々しい運命の糸が結ばれた。
「これ大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃないわよ。この運命は色んな人を巻き込んで、最後には解けないほどに絡まってしまう。だからこそこれを解かなければいけないの。ふふっ実際のところ、シャルを守りたいのもあるけど、神様としてはこれを何とかしたかったんだよね。」
思わぬカミングアウトにどう反応していいか分からなかったが、これを話すということは、隠し事は無しというエトの合図なのかもしれなかった。
「それで、どうすればいいの?」
私はエトの顔をしっかりと見た。エトも私の覚悟を察したらしく、私たちは一緒に頷いた。
「ですから、僕だけ置いてきぼりなんですが…」
「イアンにはやってもらうことがあるから、ちょっと黙ってて!」
「はいぃ〜。」
イアンツィーはエトにきつくそう言われ悲しそうに黙った。
「じゃっシャルにはこれからいくつか質問するわね。」
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