悪役令嬢は記憶と向き合うようです(3)
「シャルっ!!」
パチンという音を立てながら、私は両頬を挟まれた。
「いったい...。」
「シャロル、あなたまた一人で悩むのね...あのねシャル。誰もシャルの性だなんて言ってないし思ってもないのよ...。」
頬がヒリヒリする。その性で涙が出るのか、ソリアの言葉に涙しているのか分からない。
「そうよっ!!シャルっ!」
横を見れば、エンディーが笑っていた。
ヒリヒリする頬も、ソリアの手で暖かく感じた。
「ありが...とう..。」
私はポツリとそう言った。
私の感謝の言葉にソリアとエンディーは微笑んだ。
『ふふっ』
『あはは』
『しーっしずかに!!きこえちゃうよ〜』
「えっ!?」
森の方から子どもの声がした気がして、森を見る。
しかしそこには誰もいない。
「シャル〜ご飯の準備するわよ〜」
「は〜い!」
私は首を傾げながらも気のせいだろうと、森に背を向けた。
その森の奥、三つの光が動き出した。
『ふふふっあぶない、あぶない〜♪』
青い光が上品に笑った。
『あはは、ばれなかったかー』
赤い光が活発に動き回る。
『ちょっと!!ふたちとももっと、しんちょうにっていってるじゃん!』
緑の光が怒ったようにそう言った。
しかしどの光も楽しそうに、声はあどけないようだった。
_._._._._._._
(ほんと私使えない...)
「はぁ〜...」
「はいっため息今着きましたね??じゃあこのにんじん追加しちゃいまーす〜!!」
「えぇぇーそれエナねぇちゃんが食べたくないだけじゃん!!」
「うっ...シャル〜いいじゃん1個だけっね??」
「こ〜ら〜エナ!!好き嫌いしない!」
そう言ってエンディーはソリアに叱られた。
何をしているかといえば、昼食だ。腹が減っては戦ができぬとかなんとか言って、ソリアは豪快にも先程の熊をザックザク切っていき。ちなみに私には刺激が強すぎそこで気絶...。
その後どうなったのか分からないが、いつもなら盛り付けにまで工夫するソリアが、豪快な熊の串焼きを出てきた。しかしそこでも問題発生...。
なんと、熊の肉。硬すぎて私の顎が悲鳴を上げた。
そんなこんなで、今私の手にあるにはスープ。
私が肉を噛みきれないことに気がついたソリアが、熊の骨をだしにわざわざ作ってくれた。
「もうちょっと力が欲しいな〜」
自分の非力さに嫌になってそう呟いた。
「やめときなさい。力の強い女なんてモテないわよ〜」
「えっ??」
思わぬ角度から入った忠告に私は顔をソリアに向けた。
「いい?シャル、エナもよーく聞きなさい。男なんて生き物はね、か弱くて、自分を頼ってくれる。そんな可愛い子が好きなのよ!!」
(えっ母さん??なんかあったんすか過去に...。)
ソリアの圧にエンディーも私も少し引き気味だった。
「でっでも...。」
「あなたが言いたいことは何となくわかるわ。過去に起きたこと、そして今起こっていること。私もシャルぐらいの年頃ならもっと力が欲しいって思っているわ。」
「なっなら!!」
「でもね…シャル。その道は厳しいわよ〜何せ女だってだけで舐められる。だから今は、父さんと母さんに任せて、お願い。」
「...っ。...わかっ..た。」
ソリアの言う通りだ。今私が、焦っても仕方ないことだ。
(でも...いつかはもっと強くなる。)
「ねぇ...母さん。そろそろ教えてよ。私も知らないのよカリーが一体何者なのか。」
エンディーがそう話を切り出した。
緊張が走る中、ソリアは意を決したのか、話してくれた。
「カリーは多分、精霊の一種だと思うわ。」
「精霊??」
「そう精霊。精霊には数多くに種類があるのだけど、そのひとつに霊人化の能力を持つ者がいる。よく古い家とかで幽霊が出るって話するでしょう...それと同じ。霊人化の能力は複雑で、私みたいないち冒険者には理解できないのだけど...。」
そういうと、ソリア枝を一本とると、地面に絵を描いた。
人とその心臓部に2つの丸が描かれた絵だった。
「これが人、この世界に産まれた生命にはみんな心臓とは別にカルと呼ばれる者があるの。そしてこの丸がその心臓とカルだと思ってね。ここまでは分かる?」
エンディーと私はコクコク頷いた。
「ここからが少し複雑なの。まず人が死ぬってことは、物理的な心臓が止まるって事とこのカルの紛失を意味するもの。どちらを失っても生命は維持できない。心臓とカルこの2つがあってはじめて、生命が動く。」
「でも死んだら...物理的な死を迎えた、カリーおにぃちゃんのカルはっ!?」
「落ち着いて、シャル。そう、その通りなのよ。普通、生命の死は物理的なものが多い。その場合カルはどうなるのか?答えは、霊人化にあるの。心臓が亡くなれば、生命は維持できなくなる。しかしカルは...カルの生命を動かす力は余ってしまう。霊人化の能力の動力はカルなのよ。」
「つまり、カリーの正体は精霊で、その霊人化の動力となっているのが、カリーおにぃちゃんのカルって事?」
「その通りよエナ!!やっぱり頭の回転が早いんじゃないかしら!今からでも王立学校行った方がいいわっ!!」
「母さん話脱線しないで、その話はもう終わったでしょっ!!」
(王立学校...そんな話があったのか。...あぁそれどころじゃないんだった。)
ソリアはごめんごめんっと言いつつも悪びれた様子は少なかった。
「母さん、じゃあカリーはカリーおにぃちゃんの記憶も持ってるの??」
「それなんだけど…」
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