悪役令嬢は好かれていたようです
ーとある人物の夢ー
少女がいた
その少女は星空の下、振り向きながらこちらに微笑む。ふわりと舞う漆黒の髪がその夜空の中に消えてしましそうで、とても儚く、つい少女の腕を握ってしまった。
「ーーー!!」
「どうしたの?」
彼女の名を呼んだような気がしたのに、ノイズがかかったように目の前にいる少女の名が思い出せない。
「いや...」
私が腕を握る手を緩めた事に気が付くと、彼女はまた走り出した。
月が雲に隠れ少し辺りが暗がりになると、その少女が見えなくなっていた。
「っ!!」
全く知らない少女だと言うのに私はひどく喪失感に襲われた。
どんどんと辺りが暗くなっていくと、自分のが今どこにいるのかも分からなかった。月どころかもう自分の足下すら見えない。
コツ...コツ...コツ...
誰かの足音が近ずいて来ていた。
「誰だっ!!」
「キャッ!」
気がつけば見慣れたベットの上に私はいた。隣には見慣れた、メイドがいて、どうやら私が急に起きた事に驚いて、尻もちを着いていた。
「夢...か。」
どこか身に覚えのある少女が頭に思い浮かぶ。しかし、名前も顔も思い出すことはできなかった。知っているのは漆黒の髪。
_._._._._._._
「そっち行ったよ!!」
「了解!!やっ!!」
パンッ...ピロンッ
《レベルが上がりました4→5》
「よしレベル5キター!」
「シャルねぇちゃんレベル上がったのか!!いいな〜俺まだレベル2だぞ...」
「そんな事ないって!これからこれから!!」
少し肩を落とすカリーを励まし、私はステータス表示を見た。
「ステータスオープン。」
ピコンッ
シャロル(シャロル・エト・ヴァンビルゼ)
レベル:5
体力値:50
攻撃力:10
魔力値:1500
スキル:短剣1/追撃 1/水魔法 0
称号: 神の
ここ1週間街周辺のスライムを狩りまくり、私とカリーはだいぶ強くなっている。
表示もいくつか増えて来ていて、なかなか楽しくなってきた。
「あっ水魔法使えるようになったみたい!」
「えっ魔法!!見せて見せて!」
「じゃあ...って魔法ってどう使うの?」
前周期を遡り私は魔法師達がどのように魔法を使っていたのか思い起こす。
学校でもチラリとやったが、魔法は詠唱魔法と無詠唱魔法があって、無詠唱魔法は詠唱を飛ばすことから難易度が高いと言われている。
「シャルねぇちゃんまさか魔法のやり方分からねぇのか!?」
「えっと...カリーわかる?」
無詠唱魔法をできる気がしないし、詠唱も知らない私はカリーに期待の目を向けた。
「そんくらいなら常識だぜ!まず第一詠唱ってので自分を表し、第二詠唱で魔力の根源である精霊様に願うんだ。」
「精霊...」
そういえば、この世界は魔法の根源に精霊様がいるのだった。光の巫女に選ばれた者は、その精霊が見えるのだとか...。
「そういえばそうだった!」
この時大事になるのが名前だ。貴族は生まれた時からあるもの、
私は目を瞑り、慎重に言葉を発した。
名を始めに出す。
「エト...
そして、精霊を呼び起こす。
「ネーロン...
最後に祈りを
「我が前に水を...
ぶく...ぶく...ぶくぶくぶくぶく
水が吹き出すような音に目を開けると、私の前に水の塊が現れた。
「おお!!やったな!シャルねぇちゃんほんとに魔法だ!」
「やった...の?」
私は未だに実感がなく目に浮かぶ水の塊をつついた。
冷たい感覚はまさに水の触感だった。よく見ると、水の塊はキラキラと光っていて、普通の水とは違う感じがした。
「これ飲めるかな?」
「んー飲めんじゃねぇか?ステータス表示しながら飲めば大丈だからとりあえず飲んで見るか?」
「あー確かにそれいいね。」
というのも、この間カリーがそこら辺にあった木の実を食べてしまったことがあり、腹痛に襲われた事があったのだ。
その時にカリーがステータスを見たところ、状態異常と表示され、治し仕方表示が出たそうだ。私は指示通りに薬草を採り、カリーに食べさせたところ、無事に治ったという話だ。
「では...」
私はステータスを表示したまま、目の前の水の塊に手を入れ水をすくった。
ゴクリ....
シャロル(シャロル・エト・ヴァンビルゼ)
レベル:5
体力値:50
攻撃力:10
魔力値:1400/1500 (最大能力100000)
スキル:短剣1/追撃 1/水魔法 1
称号: 神の
「特に変わったとこは...!?」
(精霊の瞳!?これは光の巫女のみが持つ能力のはず...エト...どういうことなの?)
呼びかけても誰も反応がない。ここ最近エトは妙に静かで、少し気になっている。
「シャルねぇちゃん?どうかしたのか?」
「ううん...何でもない。何の変化もなし、見た目はこんなに綺麗なのになー」
「綺麗?ただの水じゃねーか。」
「えっ」
カリーにはこの水に漂う小さな光の粒が見えないというのだろうか...
(つまりこれが見えてるの私だけ?これが精霊ってこ...と?)
1人で考えても疑問が増えるばかりで、エトの居ない寂しさを強く感じた日だった。
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