悪役令嬢は寂しがり屋だそうです
寂しい...
私をひとりにしないで...
誰か...誰かっ...誰かっ!!
私を見つけて!!
真っ暗闇の中その声は消えていく、まるでその闇が自分の体に吸い付くように感じられた。
苦しい...息ができな...
「ーーーーーちゃん!!ーーーねぇちゃん!!」
誰かの声が聞こえる
私はこの声を知っている?
誰..誰なの?
「シャルねぇちゃん!!」
自分の手首を誰かが掴み私の名を呼んだ。
「カリー...」
カリーと私が呟くと、一気に視界が開け私たちは、家の前の路地に立っていた。
「シャルねぇちゃん...良かった、俺...シャルねぇちゃんがどっかいちゃうんじゃないかって心配で...どこ行こうとしてたんだよ!!」
カリーは涙目で私に訴えかけた。
「私は...」
わからなかった自分が今何をしているのかも。何もかも全部わからなかった。
「...ごめん。シャルねぇちゃんだって、この状況わかってねぇーんだもんな。...帰ろう。家に皆心配してるから。」
カリーは優しく私の手を握り閉めると、家までの階段を登り始めた。
_._._._._._._
夢遊病
それはいつだったかの周期で私はもなったことのある病だった。
寝ているのに、どこかへ放浪そして失踪する者もいる、心の病。
この子はなんでこの病気になったのだろうか?
私に場合、理由はただ1つ愛されたいという欲求だった。宮殿に幽閉され、誰にも愛されず、誰にも知られない。そんな暮らしが嫌だった。
誰かに見つけて欲しい、そんな欲求が寝ている私を動かしたのだろう。
しかしこの子は...
家族に愛され、幸せな日々、裕福ではないが、平民としては平均的な暮らしだ。
なぜ...
「...シャルねぇちゃん、大丈夫か?」
夜だからか、カリーは少し潜めた声でしかししっかりと私の目を見据えている。
「おんぶしようか?」
「ううん大丈夫5階まであと少しだし...それに弟にせおられるとか絶対いや!」
私はボーッとしている頭をふるい、カリーを見て元気に笑って見せた。
「カリー!!シャルは...シャル!!よかったー本当によかった。」
ドタドタと階段を下る弟と共に現れたのはエンディーだった。
エンディーは私を強く抱き締め、「よかった...」と呟いている。
「シャルは見つかったのか?...ああシャル俺の愛しい娘...」
「シャル?!...よかったわ...見つかって...ほんとに...」
ドムリもそのまま私に駆け寄りエンディーごと抱きしめてきた。
ソリアは安心したのか、涙を流しながらその場に崩れる所を、カリーが駆け寄る。
「みんな...心配かけてごめんなさい。...本当にごめん...」
やっぱりこの家族はとても暖かい。何がこの子にこの夢遊病にさせる?なぜ私は夢遊病にかかっている?
いくら考えても答えは見つからなかった。
_._._._._._._._
「シャル〜シャル〜起きて!!」
寝ている私を誰かが揺らす。
「ん...何?...って母さん!!なんで!」
普段早くに出てしまうソリアがいることに私は驚いていた。
「ふふふっ今日はどの職業も基本休みなのよ〜ああドムリは無理だけどねほら傭兵だから、今日という日は、羽目を外すやからも多いし、事件も多いのよ。」
今日は何の日だっただろうか...?
その疑問が頭にずっとありながら私はソリアによってどんどん着替えさせられた。
「さぁ行きましょ!!」
「待ってカリーは?」
「友達と見に行くってもう出ちゃったわよ。」
「見に行くって何を...」
ドンッ!!!
「キャッ!」
「もう始まるのね〜急ぎましょ!!」
なんの前触れもなく、大きな音がなり驚く私とは裏腹に、何の合図か知っているかのようにソリアは私の手を引いて階段をテンポよく下った。
_._._._._._._
「おはようございます!!」
「おはよう!ソリア遅かったじゃないか。もう始まるよ!!」
いつもの洗濯場には多くの人と白の服を着飾った少年少女がいた。
「これは...」
そうか今日が洗礼の儀だったのか。
この日のために縫われた服をそれぞれは着ていて、見ていて飽きなかった。
「シャル!!遅かったじゃない!!」
「ネネ!おはよう」
ネネももちろん白いドレスを着ていた。
「ネネおめでとう!!思っていた以上にステキよ!」
「ホントッ?!ありがとう!このドレス私の好きな花、白百合をイメージしたの〜」
確かにその通りだと思った。
袖口や裾のかけて流れるように大きくなっている縁、そして肩のラインやウエストはしっかりと見せているデザイン...白百合そのものだと思う。
ゴーン...ゴーン...ゴーン...
「それじゃ行ってくる!!」
「うんっがんばってね。」
鐘の音と共に、子どもたちは出発した。
色とりどりの着飾った子どもたちは、あの見栄の張り合いをしている貴族より余程綺麗だった。
「これが私が本当に欲しかった人生なのかな...?」
あの日遠く見えた暖かい街並みの中に今いるという事が、私の中の冷えきっていた深心を溶かして行くようだった。
「シャル!!どうしたの?」
私の顔を見てソリアは慌てふためく。
「えっ...あ。」
私はいつの間にか泣いていたようだった。
(こんなお祝いモードの中泣いてるなんてそりゃ変だよね〜)
「ううんっ!!なんでもないただ、幸せだなって!!」
涙を拭って私は無邪気に笑って見せた。
そんな私の頭を撫でながら、ソリアはじゃあシャルの時は頑張らないとね!っとやる気を見せてくれた。
(やっぱり幸せな家族だ。なんで夢遊病なんか...)
『それはねぇ〜シャロルのお兄ちゃんの死が自分のせいだってずっと苦しんでるから…だよ!!』
「うわっ!!」
久々のエトの登場に驚いて、思わず声が出たが、みんな子どもに夢中で私の声に気がついた者はいなかった。
(ふぅ〜もうやめてよ急に出てくんの…)
『はいはーい、今度から気をつけまーす。』
絶対気をつけないであろう気の抜けた声に今日はなんだか心が落ち着く。
(っで、この子のお兄ちゃんって言うのは?)
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