悪役令嬢は平和に暮らすそうです
「シャルねぇちゃん起きろ!!」
「んん、、もうちょっと...。」
季節は夏から秋に変わり、冷たいすきま風が朝起きるのを拒ませた。
「おい!!」
「キャッーーさむいさむいさむいさむい!!」
いつまでもベットに潜り込む私を、カリーが痺れを切らして、布団を奪った。
「ほら!!行くぞっ」
「ふぁい...。」
元何かと面倒見がよかったカリーだったが、あの日以来、おにぃちゃん感を隠さなくなっていた。
そのままカリーに朝食を食べさせられ、洗濯を持って洗濯場へと向かった。
「さっさむいよ〜カリー...助けてぇ」
「こっちだって寒いんだよ。どうにも出来ねぇだろ。」
確かにそうだった。
しかし、冬が近づくにつれてこの寒さ...やってられない。
貴族だった頃は洗濯などしたことがなかった私はしみじみ恵まれていたのだと実感した。
「はぁ...」
『ふふっさむいってさー』
『あはは!つめたいってさー』
『ふたりともからかって〜かわいそうじゃん!!』
私の周りで三つの光が飛び交っていた。
(かわいそう...そうか私はかわいそうなのか…じゃあ洗濯手伝ってよ!!特にララ!水の精霊でしょ!)
『えー私に水を暖かくする力なんてないもん!』
そう言って、青い光一水の精霊ことララは人型になってたらいに腰掛けた。
(なんでよっ!!じゃあノノ!ほら火で暖かくとか...)
『僕だけではでっっきませーん!!洗濯物燃えるよ〜』
そう言って、赤い光一火の精霊ことノノは人型になって私の頭に仁王立ちする。
(も〜期待するんじゃなかったーーー!!)
『もう二人揃って!!協力すれば出来るって素直に教えてあげればいいのに、さっきから手伝ってあげようとしてたじゃない。』
そう言って、緑の光一風の精霊ことナナは人型になって私の肩にちょんと座った。
『『はぁー!!別にそんなこと言ってないわよ(言ってない)!!』』
『もう本当に素直じゃないんだから〜』
「さっきから騒がしいよ。そこの三人。」
『『『申し訳ありません。フィル様。』』』
「カリー、というか今はフィルか...。とにかくフィルからもなんか言ってよ。本当に冷たいの!!」
「はぁ...精霊は気まぐれだよ。まぁ序列はしっかりしているから、僕の言うこと聞くとは思うけど...君の使役精霊なんだからちゃんと自分で使役しないと。」
「...はい。」
(やっぱそうかー...)
「勝手に出てくんなよ!フィル。」
「はいはい〜分かったからそんな怒んないでよ。ねっ☆。」
「何がねっ☆だよ!!そう言ってこないだ俺が楽しみにしてたアポウ食べたのだれだよ!!」
「あれは...」
あの日からフィルはしょっちゅうカリーと入れ替わっていた。その度に色々と揉めている。
そして、私の周りに飛んでいる。三つの精霊。この子達は、私の使役精霊となった。
「じゃあ手伝ってララ、ノノ。ナナは洗濯物乾かしてね。」
『『『はーい。』』』
_._._._._._._
「がんばってるね〜。」
顔をあげれば、そこには赤髪の天パ少女一ネネがいた。
「ネネ!!」
「久しぶり〜シャル!!」
立ち上がると、すぐネネに抱きつかれた。
「ネネ、どうしてここにいるの?」
「それは...。」
ネネは、洗礼の儀のあと早々で、どこかいい所のお屋敷の住み込みメイドになったはずだ。
平民としては珍しい事例だった。それだけネネの加護が役に立つものだったのだろう。
(肝心のその加護を教えてくれないんだよね〜)
「ご主人様に暇を頂いたの。」
いつもとは違うその笑みに私はどこか違和感を感じた。
「そんなことより、!!さっきメリーさんが区画行事として、焼き芋始めたから行こ!!カリーも!!」
「えっおっ俺も?」
「ちょっまっ」
否応なしに私たちはネネに腕を捕まれ引っ張られた。
『ふふっ楽しそうじゃない!!』
『あはは行こう行こう〜』
『ちょっまだ洗濯残ってるのにぃー』
精霊たちも、手伝いを止めて私たちに着いてきた。
_._._._._._._
「連れてきたよ〜」
「ありがとうネネ。ほらシャロル、カリーもこれ食べな焼きたてだよ。食べたら落ち葉掃除よろしくね!」
「やったー!ありがとうメリーさん!!」
「ありがとうございます。」
モグモグ....モグモグ...
(あれ...待って私たち落ち葉掃除する羽目になってない??)
ばっとメリーさんの方を見ると、メリーさんはニコッと笑ってきた。
「はめられたぁぁぁあー!!」
(芋は美味しいけれどもぉー!!)
「あっ!!!!あぁぁぁあーーー」
「なっ何!?どうしたの?」
メリーさんにしてやられたことを考えていると、急にカリーが叫び出した。
「おい!!フィル、流石に芋食べるのはないだろ。前回に続いてどう行くことだよ!!」
(あっなるほど...)
そういえば、カリーは最近好物を食べようとする度、フィルに入れ替われて、好物を食べ損なっているのであった。
「えっ?ほら今回はちゃんと少し残したでしょ?ねっ☆ほら〜見てみなよ。」
「ねっ☆じゃねーよっ残したってこんな一口が残したになるわけねーだろ!!」
「まぁまぁ...ほら僕ら体は一緒なんだし、カリーが食べたも同然じゃん。ねっ☆」
「だからっなんなんだよそのねっ☆ってムカつくわーだいたい...」
カリーとフィルの争いはいつまでも続来そうな予感がしたので、私はさっさと落ち葉拾いをし始めた。
『だーかーらー!!違うって言ってるじゃん!』
『何が違うんだよ。ナナが飛ばした落ち葉をララが水飛ばして、僕が燃やすんじゃあないのか?』
『二人とも落ち着いてよ...』
「はぁ...」
こちらもなんだか騒がしいようだった。
秋の空は冷たい風を運んでいても、ここはなんだか暖かく感じた。
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