悪役令嬢は迷子になるようです
「なんで....」
私はただ、愕然としていた。
見慣れた場所で少し調子に乗っていたのかもしれない。
「ここ、どこ?」
私が発した声は長い廊下に響いただけで、誰も答えてはくれなかった。
_._._._._._._
「じゃあ終わったら待合室でね〜」
「はーい。」
ようやく受付を終わらせた私たちは、それぞれの受験教室へと別れた。
(さてと...私の受験教室は、ここか。)
「えっ!?」
私はさっそく入ろうと手を伸ばすと、ドアが勝手に空いた...
訳ではなく、誰かが丁度出てくるタイミングだったようだ。
「あっごめんなさい!!驚かせてしまいましたね。」
「私の方こそ申し訳ありません。」
相手は多分身のこなしからして貴族だ。私は深々謝罪して、道を開けた。
「......。」
「あっあの...。」
なかなか教室から出てこない相手に、私は様子を伺うようにして見上げた。相手の空色の目とバッチリ目が合うと、その令嬢はやっと動き出した。
「あっごめんなさい。あなたがとても....その..美しかったから。」
「えっ...?」
恥ずかしそうにそう言った令嬢は自分が何を言ったのか気づいたらしく慌てていた。
「あっそのっ今のは...。」
「ありがとうございます。そう言って頂けて嬉しく存じます。」
「あっそんなっお礼何て。思ったことを言ってしまっただけなので、気にしないで。それにそんな深々礼をしなくてもいいわ。」
「しかし、私は平民でございます。」
「えっ!!うそっ....まぁいいわ。今はね。でも入学したらわたくしたちは同じ学生、仲良くしましょ!!」
(おっこれは友達確保のチャンスなのでは??)
私は、ぱっと前を向くと令嬢は手を出していた。その手を取って私たちは握手した
「...私で良ければ喜んで。私はシャロルと申します。」
「ルリィーア・サナ・ドレッディーンよ。では、わたくしはもう行くわ。実は教室間違えちゃったの。」
ふふふっと可愛らしく微笑んで、ルリィーアは廊下に出て、隣の教室へ入っていった。
(....ん?ドレッディーンって言ってなかった?つまりあの子がイアンさんの妹さんか...)
確かに言われてみれば、新緑のような髪の毛に、空色の透き通った瞳をしていた。この二点はドレッディーン家の特徴と言える。
(ってこんなこと考えてる場合じゃなかった。早く席につかなきゃ!!)
教室へ入ると、教室にいた人達が一斉にこちらを見た。
(えっ....)
私は視線に気づかないフリをしながら、自分の席へと着いた。
(作戦とはいえ、ここまで注目を集まるとは思わなかったな...)
入学後の友人作りは案外上手く行きそうだと感じを私は少しほっとした。
ガチャ
行き良いよくドア開けられたと共に、私の時程ではなかったが、またもや教室がざわついた。
「あれが噂の...」
「なんでも平民の、しかも花街の出身だそうよ...」
「あの様子じゃあ、本当に受かるのか?」
教室に入って来たのは、白銀の髪を持つ少女。リリアーネだった。
(もうそんなに噂が広まっているんだ...)
神託があり、リリアーネが巫女とされてからまだ2ヶ月程しか経っていない。しかし、誰もがあれが光の巫女だと知っているようだった。
「気持ち悪い...」
「えっ....」
話されている噂に耳を傾けていると、ふと後ろからそう言うものがいた。
先程見た時には後ろの席には誰にもいなかったはずだ。
(誰かが来たような様子もなかったのに...)
そう思うと、私は反射的に後ろを向いてしまった。
しかし、そこには誰もいなかった。
(気のせい....?)
確かに、私は女の子の声を聞いた気がした。どこか眠たそうで、儚いそんな声を。
ガチャ
「.....?」
(......そうだった。声が出なくなるんだ。)
コツコツとヒールの音を響かせて現れた女性の先生。彼女ら試験監督を務める先生は、この時、防音魔法の応用魔法、遮音魔法によって生徒同士の声が聞こえなくするのだ。
初めての出来事であるだろう子達は案の定、少ししたパニックになっていた。
「皆、席に着いていますね。もう理解した者もいると思いますが、今遮音魔法により生徒同士の会話を遮断しています。」
誰もが静かな今、先生の声は凛と教室に響いた。先程噂話を楽しんでいた子達の顔にも緊張が走り出した。
「では、今から規約を作ります。これは入試中の不正防止のものです。またこれを拒む場合は入学不可とします。では、手の甲を挙げ、私に規約の印が現れた事が分かるようにしなさい。《規約:我が学校長クリソラン・ノームルの名の元。対象:我が学校へ入学を挑む者達。これより入試を始める。この入試への一切の他人からの干渉。魔法による不正。また、それ以外の悪意ある行動を禁じる。》ではこの規約に同意する者は首を縦に振れ。」
皆一斉に首を縦に振り、無事に手の甲に規約の印。またの名、天使の印が着いた。
「では始め。」
先生の声とともに、机の上にどこから音もなく紙と筆記用具が落ちてきた。
(最初はこれはびっくりするよね。)
私は周りをキョロキョロとしている子達を横目に、自分の解答を始めた。
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