悪役令嬢は成長を見せるようです

 楽しい時間はいつだってあっという間に終わる。エンディーは仕事に戻ると言って家を出た。そして私たちは...


「よしシャルねぇちゃん!行くか。」


 コックリ


 私はカリーの呼びかけに強く頷いた。

 _._._._._._


 というわけで向かったのは街の外だ。

 私もこの周期で初めて知ったのだが、街周辺の弱い魔物でも魔石を出すらしく、その魔石を集めて平民の子はちょっとしたお小遣いにしているらしい。


「シャルねぇちゃん行ったよ!」


「分かった!!」


 広い高原の中、小さな子どもたちがあちこちで狩りをしていた。その中でも特段小さい私たち......


(って思ってる場合じゃない来てる来てる来てるよー)


「うあぁーー」


 飛んできたスライムとかいう、青いにゅるにゅる目掛けて私は適当に持っていたナイフを振り回す。


 パンッ


 弾ける音がしていた目を開けるとそこには何もいなかった。


「やったねーシャルねぇちゃん!!ほら魔石だよ!」


 カリーが駆け寄って来て、私の足元に落ちていたと思う青い宝石を取った。大きさは私たちの小さな指程だった。


「よしっもう1回同じやり方でやろ!今度は私が追い込む方やるから!!」


「分かった!!」


 カリーと私はそれから交代ばんこで、スライムを倒していった。


(なにこれーチョー楽しいわ!!貴族令嬢なんてやっぱ狭い世界っだったんだ!!)


 私は子どもらしい無邪気な笑顔を浮かべながら合計10体ものスライムを倒した。


 パンッ


「よしっ10体目!!」


 ピロン


《レベルが上がりました0→1》


(なんこれ??)


「どうしたのシャルねぇちゃん?」


 私が魔石も取らずにぼーっとしてるのに引っかかったのかそうカリーは聞いてきた。

 どうやら私の目の前にあるこの表示は見えていないらしい。


『おーやっとレベルに気がついたかー』


「なんでもないよカリー早く魔石変えて貰いに行こ!」


 エトの話は気になったが今は無視させて貰い、カリーと街へ向かった。


『おーーーーーーいっ!!』

 _._._._._._


 街に入ると私たちは中心部にそびえる巨大な建物を目指した。

 その建物に近づく度に人通りも増えた。


「シャルねぇちゃん...手繋ごうぜっ!」


「えっ?」


 突然の事で驚いてしまったが、はぐれないための手段だろう。


「ほっほらはぐれると行けないし...嫌ならいいけど...」


 私がすぐに了承しなかったので、カリーはだんだん声が小さくなって言った。


(なんそれかわいいぃー)


「いいよ繋ごう!ありがとうカリー!」


「別に...」


 カリーはそのまま少し俯いて黙ってしまった。


(かわわぁー)

 _._._._._._._


 貿易商業金融協会通称、ボシキ

 冒険者協会に次ぐ大きな会社と言うことは貴族令嬢だった頃にも聞いた事があった。

 ボシキはその名の通り物流から販売そして銀行とお金に関わる全てに関わっていると言っても過言ではない。


 そして今後、あの魔法の塔とも衝突、和解することまで私は知っている。


 そんなボシキだが、魔石を硬貨に替えてくれることもしている。しかも14歳以下の子どもには登録なしでだ。


 というのもボシキは信用第一、会員にしかサービスは基本提供しない。


(まぁ鑑定の加護とか看破の加護とかある人に見られるだけだから、大抵のの人は会員になれるけどね〜)


 何せ私も貴族令嬢時代は会員だったしかもブラックカードの...


 そんな懐かしい思い出を思い出している内にボシキに着いたようだった。


「何回来てもやっぱでけー」


 カリーは目を輝かしながら辺りを見渡していた。

 いつの間にか、カリーと繋いでいた手も離れカリーは駆け足気味に入口に向かっていた。


「カリー待っ...危ないっ!!」


 私の目に映ったのは、カリーの目の前に大きな馬車が近ずいているところだった。

 私は反射的に目をつぶってしまった。


 ヒヒィーン!!

 キャー!!


 馬の大きな叫び声と共に女の子の悲鳴あたりは一時騒然となった。


「危ないだろっ」


 その声にはっとなり、目を開けるとカリーは尻もちを着いて馬車ギリギリに居た。

 私はホッとすると共に急いでその場に駆けつけた。


「申し訳ありません。どうか、どうかお許しを...」


 あの馬車からして、相手は絶対に貴族。ここは何としても乗り切らなければ。私はそう強く思いながら深深と土下座する。カリーも事態を察したように同じ様にした。


「何事だ。」


 そう言って現れたのは、綺麗な黒髪の青年だった。

 私は顔をあげないままでいた。


「ジルベルト様申し訳ありませんこの者たちが急に現れたものですので...」


「お兄様!」

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