悪役令嬢は準備をするようです


 私の洗礼の儀は無事に終わった。

 運命という珍しい加護によって、少し目立ってしまったが、次の子がリリアーネで良かったかもしれない。リリアーネという光の巫女の誕生によって、私のことなど皆忘れたようだった。


「あれはなかなかいい演出だったでしょ?」


「...まぁ、自分のことじゃなければわくわくしたけどね?」


「そうですよ。僕なんて、後ろは向けませんから急に後ろで雷のような音が鳴って驚きましたよ。」


 洗礼の儀から数日後、私とイアンツィー、エトはまた図書館に集まり作戦会議を開催していた。


「で、私とエリオット殿下が運命で結ばれてるってどう言うことなの?」


 私は前回交わされてしまった質問をエトにぶつけた。


「....ん〜なんて言えばいいか分からないけど、、、元からシャルはエリオットと運命で繋がっていたのよ?」


「えっ!?じゃあどうして!!」


「そうです。それは気になります。」


 私とイアンツィーの目線にたえ代えたのか、エトは少しずつ話し始めた。


「えっと....、だからね、元々シャルとエリオットは運命で繋がっている。そこにリリアーネの運命が絡んで、シャルとエリオットの運命が逆に切られている状況に今まではあった。で....こっからは私の話になるんだけど、私の仕事はその運命を管理する神なのね。...まぁ、でその仕事的には、下界が上手くね....えっとなんて言えばいいかな、、んーその大きな争いとかにならないように、運命を繋いでいるの。...逆に言うと、私は大きな争いにならない限り、私はあなたたちを見守ることしかできない。って長くなっちゃね。」


 エトが話すその姿はどこか悲しそうだった。最近エトのこんな姿をよく見るようになった。


 ガバッ


「えっ!?何?どうしたの?シャル。」


 私は席を立ち、勢いよく隣に座るエトに抱きついた。


「エトは私たちには何も話してくれないから、エトが今までどんな事で苦しんで来れたのか私たちは知らない。だから、今はこうさせて。」


「シャル...。ごめんね。何も話せなくて。」


 少しの抱擁の後、私は満足し席についた。


「....また二人の雰囲気作られて、僕はどうすればいいんですか?」


「ごめんなさい。イアンツィーさん。」


「ごめんね〜イアン。そんなに寂しいなら貴方も抱きついてきていいのよ?」


「レダ様にそんな失礼できませんよっ!!後、シャルさん。いつになったら僕を愛称で読んでくれるんですか?なんか寂しいですっ!!」


(あっ確かに...)


 私は何気なく、イアンツィーさんっと呼んでいた。


「何よ〜やっぱ寂しいんじゃないの。...シャル、いいんじゃない?ここだけでも。」


「ここだけ....分かりました。ここだけですよ?イアンさん。」


「やったー!!」


 無邪気に喜ぶその姿は、どう見ても貴族とは思えなかった。


「あっそういえば、事業の方はどうなってるんですか?」


「あぁ...やはり公爵家が新事業を始めるとなると色々ありましたが、ピュリタ病は今現在どうにかしなければいけないものだったので、結構すんなり進んでいます。そろそろお店を出す予定なので、シャルさんもよかったら来てくださいね。『エルフ直伝の薬屋』って事で売り出すので!!」


「すっすごいですね…。」


 だいぶ前に教えた、ピュリタ病の特効薬の話から、ここまで進めたイアンツィーに私は感心した。


(でも、これからボシキとの衝突があるからね...なんか楽しみだな〜)


 そんな呑気なことを思っていると、エトに話を戻された。


「で、今回はどうリリアーネからみんなを守るため、運命を切るかなんだけど...」


「あの...一つ思ったことがあるんですが、」


「はい、イアン。どうしたの?」


 手を挙げたイアンツィーをエトがさす。


「僕は神官長ですので、リリアーネとは今一番近しい人物だと思います。その僕から見るに、彼女は本当に光の巫女なのですか?そもそも光の巫女は何ができるんですか?大神殿にある書物を見ても、ただ光の女神レダ様の使いとしか...。」


 確かにそうだ。イアンさんの言う通り、今までの周期を見てもこれといって何かを成し遂げた訳では無い。


(ピュリタ病の特効薬もリリアーネじゃなくとも作れたし…精霊の瞳だって私も持っているし...)


「....え〜と、分かんない。」


「「えぇ!!」」


「ほんっとごめんね。分かんないの、光の巫女という名で降ろすように私も上から指示されただけで、でっでもリリアーネの性格ならある程度把握してるから...何がしたいのかは分かる、、と思う。」


 エトの声は段々小さく弱々しくなっていった。

 私もイアンツィーもその姿にそれ以上攻める気にはならず、リリアーネがどんな性格で、どう行動するのか予測し対策することにした。


「第一目標として、リリアーネに学校を牛耳らせない。ってことでいいね?」


 エトのその言葉に私とイアンツィーは頷いた。


「その為にも、四大公爵家、そして王族をリリアーネの味方にさせない事が大事ですね。これは僕が何とかできると思います。そこそこ交流がありますから。」


「昔の経験上、同じクラスの人間、特に男子や身分の低い子にも注意が必要だと思います。でも、これを私の味方つけられるかどうかは...」


「行けるよシャルなら!!とりあえず首席、学年トップ入学で目立とう!!」


「そうですよ。あと、今スィーピアさんの魔法で抑制されている本来の煌びやかさがあれば完璧です!!」


(えぇ....)


 二人の圧に私は少し後退するが、よく考えてみれば、皆を守る。何も失わないと決めたのだった。


「よっし!元公爵令嬢の力をお見せします!!」


 とりあえず話がまとまり、作戦会議はお開きとなった。最後、イアンツィーにこれから忙しくなるから次会うときは学校だと言われ、硬い握手を交わした。

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