閑話 親友はひきこもりのようです
赤髪を左右で三つ編みにしている少女が
私の名前はネネです。
この間、洗礼の儀を迎え
まぁそんなこんなで、暇を頂いたのでちょっと洗濯場に来てみたのです。
「おや?ネネ、久しぶりじゃないかっ!!」
「メリーさん!!お久しぶりです。」
そこには相変わらず元気な区画長メリーさんがいました。
「何してるんですか?」
「ん?...あぁこれかい。実は焼き芋しようと思ってね。あっついでにここの落ち葉を片付けようってわけさ。」
なるほど、焼き芋で人を釣って落ち葉を片付けさせようという魂胆なわけですか…
「どうだい?いい企画だろう?」
メリーさんはそう言ってニコッと笑った。
「えぇとっても!!シャルたちも連れてくるね!」
「そりゃーいいや。連れてきな。」
とりあえず、メリーさんとは別れて、私はシャル達を探すことにしました。
あっいましたいました。こんな寒いなかお疲れ様です...ん?なんかたらいから湯気出てる気がしますが、気のせいでしょう。お湯なんてどっから持ってくるんです。
私はそう言い聞かせて、早速声をかけました。
「がんばってるね〜」
「ネネ!!」
私はつい嬉しくなってシャルに飛びついてしまいました。
シャルはそんな私を抱き締め返してくれました。相変わらずの優しさですね!!
「久しぶり〜シャル!」
「ネネ、どうしてここにいるの?」
「それは...。」
やはりその質問んですか...うんん〜真実はあまり話したいものではないのですよね。
「ご主人様に暇を頂いたの。」
......あーなんか訝しげな表情していますよシャルさん...まぁいいや!!
「そんなことより、!!さっきメリーさんが区画行事として、焼き芋始めたから行こ!!カリーも!!」
私は話を誤魔化して、無理やり二人の手を取ってメリーさんの元へ走った。
「えっおっ俺も?」
「ちょっまっ」
はぁ...やっぱりシャルとこうやって話せるのが楽しいんだよね…。
この1年間私はずっと思っていた。そして、私はこの時間、空間を守りたいと思った。
10年前のあの日私は約束したから。
一10年前一
その日私はいつも通り洗濯場にいました。その噂を聞きつけるまでは。
「聞いたかいあの最近引っ越してきた人達の子どもさんが亡くなったって。」
そう誰かが話題にした。洗濯場は確かに洗濯する場ではあったが、街の噂が飛び交う平民の社交の場でもあった。そんな洗濯場に昔からいたので、私はいつか噂好きになり耳を済ますようになった。
「えぇ...確かカリーだったかしら?」
「そうそう...そんな名前だったわ。気の毒ね。」
最近引っ越してきたカリー...か。あの変わり者って一時期話題になっていた家族だ。なんでも噂では、元Sランク冒険者らしい...。
まぁ噂だし多分嘘でしょ。冒険者なんてあんま知らないけどSランクってめっちゃ強いらしいじゃん。しかも結構稼いでるらしいし、こんな
「私の聞いた話だと...その影響で、妹ちゃんが精神的にダメになっちゃったみたいでね...」
「まぁ!!本当に大変ねそれは...」
「あの...。」
気になりだした話題に耳を傾けていると、それを止める人がいた。
もう!!気になるところだったのに...。
止めたのは、少し黒がかった茶髪をひとつにまとめた少女だった。
「その噂やめて貰えませんか。兄が亡くなったことも、妹が部屋から出てこないことも、あまり気持ちのいいことではないので。」
誰もが二度見はするような整った顔がそう言って笑った。
「そっそうね。」
「悪かったわ。」
「ごめんなさいね。」
少女の笑顔にその場の皆が引き込まれると、噂好きの彼女たちは別の話題へと切り替えた。
本当...お人形さんみたい。
今は可愛らしい顔立ちだが、成長すれば街では有名な美人になるだろう。
そんな少女は言いたいことが言えたのかそこから立ち去った。
いつもの私ならば声をかけていただろうが、その時は見とれていてただ立ち去るのを見ていた。
「ただいま〜...」
私は洗濯物を持って家に帰った。
家に入った瞬間臭う酒とキツい香水の香りが漂っていた。毎日掃除しているにもかかわらず机の上はまた酒のビンが乱雑に並べられていた。そして...
「はぁ...。」
私の家は母子家庭だった。母にはここまで育ててくれたことは感謝している。しかし...
奥にはきわどい服装のままベットに倒れ込んだ母がいた。
母は容姿に恵まれていた。そしてその体つきも男性に好まれるようなものだった。昔から何かしらやっていたのだろう、母の加護は淫乱の加護だった。
男に何度も捨てられ、仕事から帰るといつも酒を浴びるようにのみこれだ。
もちろんお金はほとんど母の酒と化粧品に消えていった。
「こう考えるとよく私この状況で生きてるよ。」
私はこんな状況でもクスリと笑っていた。
その夜、最悪なことが起きた。母が私を仕事場へ連れていこうとしたのだ。ありえなかった。流石の母もそんなことだけはしないと思っていた。
だから...逃げた。
机の上にあったビンに手をかけて、その後のことは無我夢中で、家を出た。できるだけ遠くに、速く遠くへ行きたいと思った。月明かりが
その時、出会った。
「はっはっはっ...」
走り疲れてしゃがみ込み、月を眺め見上げるとそこにいた。
目は虚ろで、足取りも朧気な少女。昼間に見た少女とは違った美しさだった。
月の光が少女を照らし、その黒髪が輝きを放っていた。
「あっ」
その少女は泣いていた、私は本物の真珠なんて見たことがなかったけど、絶対に真珠よりも美しかった。
「おはよう!!洗濯場は初めてだよね!!私はネネ。あなたは?」
「私は...シャロル。よろしく、ネネ。」
あの日からもう9年が経っていた。でも私はすぐに気がついた。目の前にいる子の少女が、あの月夜に涙を流した少女だと。
あの日、汚いものばかりで埋め尽くされた私の世界に輝きを満たしてくれたその少女が私に笑った。
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