五+六章 【追憶】3
「こいつらも何で一緒に付いてくるんだよ! 勝ったら入山を認めるっつっといてこれかよ!」
激闘の翌日、ギルドルグたちは国境警備軍の幹部面々とともに、霧厳山脈の調査へと向かう。
将軍お手製の地図や、ギルドルグの経験を活かして探索を行うも、特にめぼしい成果は得られない。
しかし突如として、宝石光と思わしき凄まじい光が夕暮れの山脈に顕現する。
「まぁ九分九厘罠だろう」
宝石光ではなく、何者かによる罠。誘い。
それを感じ取っていてもなお、ライオンハートの可能性がある以上は行かなければならない。
光源と思わしき洞窟へと彼らは侵入するが、中は仄暗い闇に覆われ、ゆっくりと歩みを進める。
しかし進んでいる途中に急遽洞窟を大きな揺れが襲い、洞窟の入り口が完全に封鎖されてしまった。
一行は途方に暮れるも、最早進むほかなくなった。
彼らは最奥にたどり着くと、山中にはまるで似つかわしくない、大広間へと辿り着く。
「侵略拠点? そんな馬鹿馬鹿しいものではない」
死んだと思われていたダズファイルが彼らの前に現れ、警備軍の面々は驚愕する。
そしてダズファイルの後ろに飾られていたのは、見たことがないほど巨大な魔法石。ライオンハートは既に奪われていたのだ。
ダズファイルが膨大な魔力を使って、『ブロッケンの魔物』で霧の魔物たちを出現させる。そこに部下、メイ・イオダストも現れ彼らに襲い掛かった。
「精一杯あがいてみせろ。久しぶりに楽しめそうだ」
「御仕舞だ、ここで朽ち果てろ!」
全力で戦い続けるギルドルグたちではあるが、対照的にダズファイルは余裕を覗かせる。
気をよくしたダズファイルの口から、遠い過去の記憶を語られる。
その記憶によれば、ユウとゼルフィユはかつての戦争でオスゲルニアに連れ去られたエルハイム人の仲間だった。
さらにはオスゲルニアで過酷な仕打ちをうけ、逃げ出していたのだと。
怒りに身を任せてゼルフィユが特攻するが、あっさりと返り討ちにあう。
しかしギルドルグがダズファイルの魔法の秘密に気付く。
彼の魔法も完璧ではない。外の激しい風にさらされているのでは、全ては消し飛んでしまうのだと。
ピースベイクがこれを聞きつけ、警備軍の面々で広間の柱の一本をたたき折る。
結果広間の天井は一部から瓦解していき、ダズファイルの召喚した魔物たちは激しい風に消え去った。
形勢逆転――かと思いきや、ダズファイルは一つの犠牲とともに新たなる魔法、『ヴァルプルギスの夜』を展開する。
それは風をもってしても消えることのない魔物たちを召喚し、意のままに操るものだった。
「親父が守った国だ。親が守ったものを、子はずっと守っていかなけりゃいけねぇ」
「褒められたとて何も感じないな。今から地に落とす虫に何を言われようとも」
「救いのというのは、それを本当に求めたものに必ず与えられる」
「王の前に立つとは図が高いぞ。控えろよ諸人」
「全てに必ず終わりは来るんだ。このエルハイムの、長い冬にもな」
ギルドルグは、旅路の果てに何を見つけるのか。
「才能なんて必要ない。数えきれないほど努力をして。血の滲むほど努力をして。そんな人こそ、最後に報われる」
霧厳山脈の頂上で、最後の決戦が幕を開ける。
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