6――一騎打ち、お受け致す

ざわめく陣中。


「この時代に一騎打ちだと?」


「前田め、いよいよ進退窮まったと見える」

 

 島津兵は口々に嘲るような言葉と、刺すような視線を向ける。殺気が槍衾であったなら、今ごろ利親は穴だらけになっているだろう。


「おいが武尚や。一騎打ち、お受け致す。武士ん誉れじゃ」


 朱鑓の群れから顔を出したのは、謀反という言葉からは想像もつかぬ邪気のない顔であった。


彼の後ろでは種子島を構えた島津兵が並ぶ。


「なりませぬ。この期に及んで一騎打ちなど…御館様が討たれればここまで来てこの軍勢散り散りになりまするぞ」


毛利長安は冗談ではないという顔で、怒気のこもった声をぶつけてくる。


この初老の男、すでに決した勝負を投げるような武尚の軽挙が我慢ならぬらしい。


「おいに恥をかかせっつもりか。そこをどけ」


 だが、このときばかりは武尚も退かぬ。

 事に戦の事となると、この青年は自分の流儀に対して一歩も妥協せぬところがあった。


――これだから戦餓鬼は始末に負えぬ。だがまあ、我はこの男に賭けた。何をいまさらは、儂もか。


#100文字の架空戦記

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