3――仏狼機砲
「ほんのこて良か眺めじゃな。たまらん」
島津武尚は、一斉に口火を切った
視界の先では、豊臣幕府方は騎馬の突撃に気を取られており、潰乱と言って良い打撃を受けている。
その笑顔を見て、捕虜になった後に島津家砲術方師範に召し抱えられた、ウィリアム・マディソンはその笑顔を見て複雑な顔をする。
元より合衆国では差別されることの多かったアイルランド系移民の彼は、無邪気に新技術を受け入れる日本人を好いてはいた。彼らの多くが、人種的な差異を気にしないところがあるのも気に入っている。
友軍に捨てられるように捕虜になった後に、彼は島津に帰順していた。負傷していた彼を看護してくれた日ノ本人の娘を娶り、今は三浦東湖と名乗っている。もはや合衆国に戻る気は無い。
「のう三浦殿、島津ん砲術ばどう見る」
「以前に比べれば格段の進歩かと。ですが、まだまだですね」
「こんた手厳しか。まだまだ訓練が必要じゃなあ。そして、まだまだ大砲ばこさえんと」
そう答える武尚の顔は、どこまでも無邪気であった。
彼は後世の創作で作られたイメージとは異なり、火力戦の信奉者であった。
この若者は、火砲の発達がいずれ自分たち侍の地位を脅かす事も理解しながらも、貪欲に技術の進歩を追い求めるところがあった。
それはそれ、これはこれと爽快に割り切っているのだ。
島津家はこの「舵楽洲の戦い」の後も、巨額を火砲開発に投じ続け、島津砲兵隊の拡充に努め続けることとなる。
#100文字の架空戦記
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