米洲島津家秘録
原型(プロトタイプ) 亜米利加皇国
「異教徒どもは皆殺しだ。この新たな希望の地に、奴らは要らぬ」
復讐の念に燃える戦士たちは、戦斧や弓矢などの武器で次々に清教徒たちに襲い掛かる。しかし、未知の兵器――マスケット銃の前に多くの戦士が倒れた。
彼らはあまりに異国の射撃武器に関する知識と経験がなさすぎたのである。
周囲に特段の地形障害もない平野におびき出された彼らは、一方的に銃弾の雨にさらされた。
虐殺はそれからわずか一時間ほどで終わった。
戦士をあらかた殺した後に、彼らは戦利品としての女子供をさがしてピクォート族の村へと侵入した。
「女は殺すな。多少痛めつけても構わないが、貴重な資源だからな。ガキは殺してもいいがな」
暴力を楽しんでいるものに特有のぎらついた瞳で周囲を見渡していた指揮官は、不意に立ち止まった。
そして、驚愕に目を見開いたまま後ろへと倒れる。
「バカな、敵が見えない」
「どこにいるんだ!」
「かまわん、とにかく撃て。動いているものは皆殺しだ」
応射してもまるで手応えがないばかりか、眉間を銃弾で射貫かれるものが続出するありさまであった。
村は森のすぐ近くに位置していたため、周囲に視界が効かないのも災いした。
圧倒的な優位を確信していただけに、清教徒たちの動揺は大きかった。
不意に、ピクォート族のテントの入り口が開けられたかと思うと、抜刀した鎧武者が数人現れる。接近戦への備えを怠っていた彼らは、逃げ惑う暇も無く武者の太刀に両断される。
清教徒が
「他愛なし」
「正征さま、あまり前に出られては困りますぞ」
天狗様の面頬を着けた姿老武士に言われると、正征は頭をかくような仕草をする。
「許せ、あまり見ない異国人が珍しくてな。一人くらいは生け捕るべきだったかもしれぬ」
「帝は一当てして戻れとの仰せでしたぞ。急がれよ」
「あい分かった。帝の思し召しはそうであったな。是非も無し」
そのやりとりの最中に、種子島や大筒を携え、当世具足に身を包んだ鎧武者の一団が音もなく背後から現れる。
楠木家の近侍衆、つまりは家臣団のうち
彼らが掲げる旗印は錦の御旗。
日の本を逃れた末に、この
彼らは武力と政略結婚を駆使して現地民を支配下におき、独特の治世を築きつつあった。
彼らがこの地に築いた国は、後に亜米利加皇国と呼ばれる国となる。
そのことを、彼らは知る由もない。
#100文字の架空戦記
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