第四話 第一次アラビア海海戦 ~DRPM side~

――日本人は随分と優美な戦艦を作るのだな。


ドイツ人民共和国「赤衛」海軍DRPMの戦艦〈トロツキー〉艦長、ハンス・リトヴィンスキーは双眼鏡で二隻の『信濃』級戦艦を見て、そう思っていた。


日本人がドイツ赤衛海軍を仮想敵として作り出した、18インチ砲を搭載した怪物、彼の知識ではそうなっている(実際には「信濃が」搭載していたのは、20インチ――45口径51センチ連装砲だった)。


その後ろにはこれまた、日本刀のような美意識を感じさせる高速戦艦『周防』級が四隻も垣間見える。


ふと、ハンスが後ろを向くと、敬愛すべき共和国の若き指導者、ギュンター書記長の忠実な従僕たる政治将校殿は、既に司令塔へ退避していた。


一方、『トロツキー』に座乗している艦隊司令閣下は、五分ほど前に司令塔内から『トロツキー』を含む東方艦隊第一戦隊に突撃を命令している。


これで戦闘艦橋はハンスの玉座となった。


諧謔めいた言葉を口の中だけでつぶやくと、ハンスは主砲の発射を命じる。


主砲発射ファイエル


48センチ連装主砲が、彼の命令に従い咆哮する。


第一次アラビア海海戦が始まった。


#100文字の架空戦記

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