第三話 第一次アラビア海海戦 ~IJN side~


「…戦艦ヲ含ム15隻ノ敵艦隊ヲ発見。尚戦艦ハトロツキー級ノ可能性大ナリ」


緊張した面持ちの通信兵によって、索敵機から打電された電文が読み上げられる。

戦艦『信濃』の森下艦長の顔に、微かな笑みが浮かぶ。


先の「インド洋海戦」でからくも戦術的勝利を納めた帝國海軍だが、それと引き換えに海戦に参加した航空母艦4隻のうち、3隻が中破判定、1隻が大破(のちに雷撃処分)と少なくない損害を受けてシンガポールへ回航されていた。


ドイツ人民共和国を空母後進国と侮り、みすみす楽に勝てる勝負を辛勝にしたと見られている第三艦隊司令官はすでに代理が立てられているという。

仮にも勝った司令官としては異例なことに、予備役編入が決まったというもっぱらの噂だった。


しかし、ドイツ赤衛海軍とて、なけなしの空母のほぼすべてを失ったと見られている。


そのおかげで、今のアラビア海に戦艦の艦隊決戦を邪魔をする無粋な航空母艦は一隻もいない。


「ドイツ赤衛艦隊のお出迎え痛み入る。このアラビア海に今空母はいない。この周防と存分にやろうじゃないか」


#100文字の架空戦記

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