第二話――使われなかったハル・ノート
「ありました!」
捜査員が差し出したタイプライター文書には、ハリー・ホワイトのサインがあった。
「ハル長官に提出されるはずだった日本へ手交されるはずだった外交文書の草稿…これは酷いな。列島に引きこもれとはな」
文言はあれこれ書かれているが、平たく言えば日本がこれまで苦労して獲得してきた大陸利権を放棄せよという文書だった。
仮にこれが手交されていた場合、最後通牒と見なされていたかもしれない。仮に開戦に至らずとも、両国の間に深い禍根を残しただろう。
「ルーズベルトの死去は、我が国にとって僥倖だったかもしれない」
昨今、ドイツの敗色が濃厚となったことで日本が独伊との同盟関係を破棄したことをきっかけに、日米関係は急速に改善しつつある。
捜査官はこの文書が歴史の表舞台に出なかったことを、神に感謝した。
◆ ハリー・デクスター・ホワイト
「(Harry Dexter White、1892年10月9日 – 1948年8月16日)は、アメリカ合衆国の官僚、ソ連のスパイ。フランクリン・ルーズベルト政権の財務長官であるヘンリー・モーゲンソーの下で財務次官補を務めた。(中略)1941年、ルーズベルト大統領時代のアメリカ合衆国の財務次官補としてハル・ノートの草案作成に携わった。11月17日に「日米間の緊張除去に関する提案」を、財務長官ヘンリー・モーゲンソーに提出(中略)25日に大統領の厳命により、ハル長官は「ハル試案」を断念。この「ホワイト試案」に沿って、いわゆる「ハル・ノート」が日本に提示される」
(ウィキペディアより引用)
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