11――義挙 クーデター
「豊臣秀親殿は潔う腹を切られた。武士として天晴な最後やった。こん武尚が介錯させて頂いた!」
武尚は大音声でそう言い放つと、その場にいる誰もが何とも言えぬ表情で顔を見わせる。
その場にいる誰もが思った。
いくら御大将の武尚殿といえど、さすがに秀親公の無様な最後は隠し切れまいと。
だがしかし、討ち果たした憎き敵の最後にまで情けをかける武尚の一貫した態度に感じ入り、あまつさえ涙まで流す者さえいた。
真に人たらしの面目躍如といったところであった。
しかも、これを計算してやっているわけではなく、あくまで本人は大まじめであるところに人物としての面白みがあった。
一方、謀略と調略の上手である毛利長康は渋い顔をする。
従来の権力者を貶め、政権を倒す事の正当性を主張することが
―まあええか。この男にそれは無理じゃけぇ。
この男を御大将に担ぐと決めた時から、腹芸や演技の類は要求しないと決めていた。
そもそも要求したところでマトモにできる訳がないし、この男はそういうものをひどく嫌うところがある。
それでも高潔なばかりではなく、長康の汚れ仕事を認めて十分に報いることも知っている。
なんとも複雑な男であるな、と長康は思っている。
そして、誰よりもたらされているのは儂かもしれぬ、と長康は思っている。
以前ならば主君が凡庸な将とみれば取って代わろうとしたかもしれない男が、今では武尚の作る世を見てみたい、と誰よりも強く思っているのだから。
#100文字の架空戦記
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