満洲石油戦争(マンチュリア・オイル・ウォー)

第一話 ファイブスターズ~国際石油資本~

――1948年(光文23年)4月1日 満洲帝国駐留英軍司令部


「ソ連はどこまで本気なのだ?」


「本国からの情報によれば、現在国境地帯に展開しつつある師団に加え、シベリア鉄道経由で増援と補給物資が運び込まれつつあります。彼らは演習と称していますが、規模が大きすぎます」


「それで本国からの増援はいつ到着するのだ。我々では今判明している師団数ですら阻止出来るかあやしいのだぞ」


「インドおよび豪州から、合計10個師団が増派されるとのことですが。一番早い豪州からでも、半月はかかるかと」


「なんということだ…何故ソ連が今になって」


「満洲油田ですよ」


「「元はといえばファイブスターズ、国際石油資本の利権争いか。あの油田に投資していたのは我が国のBPと日本の真田サナダ石油オイルだったな。満洲油田など開発するべきではなかった。中東だけで十分だったのに」


「今それを言ってもはじまりませんよ。問題は、膨大な埋蔵量が見込めるこの油田による石油価格下落です。なんだかんだで、ソ連は産油国かつ資源輸出頼りの国ですからね。石油の値段が下がりすぎては国が持たないのでしょう」


「オイル戦争か。笑えないな。だが、やるしかない。そういう事だな」


「とにかく、今は時間を稼ぐ事です。同盟条約に基づき、日本に派兵を要請しましょう。彼らにとっても満洲の石油は魅力的のはず。この際です、採掘権でも何でも高く売りつけるほかありませんよ」


「分かった。本国と交渉しよう。満洲を失うよりはマシだろうからな」



――この日から10日後に英国とソ連の間で始まった戦争は、後に世界大戦へと発展する。その前哨戦となったのが、のちに「牡丹江戦車戦」と呼ばれるソ連邦と日英連合軍の戦闘であった。


#100文字の架空戦記

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る