亜米利加皇国第二次世界大戦へ参戦す
第一話ー最後通牒
明亜五年(西暦1941年)12月1日 ――江戸府赤坂米皇国総領事館
亜米利加皇国国務長官、毛利慶永は手交された外交文書に落としていた落ちくぼんだ目を瞬かせる。
一、貴国海軍が
二、貴国の保護国である
三、貴国による中国大陸蒋介石政権への援助停止
四、米領香港の中国への返還
五、フランス領インドシナへの派兵停止
謀略家としてあまりに有名過ぎる一族の末裔である彼は、数々の難交渉をまとめ上げて来た頭脳の入った額をさする。
「最後通牒と受け取ってよろしいので?」
その言葉を聞いたその客人、外交官としての経歴は毛利に負けず劣らずの日本帝国外務大臣、吉田茂はハバナ産の葉巻をふかしながら韜晦している。
「我々としても平和に向けて努力はしておるのです。なにしろ、貴国と我々は同祖たる民族ですからな。南北朝の時代に分かたれたとはいえ、皇室を尊崇することは変わらない」
「まことに同感です。我が
「それが実現すればなんと心強いことか。執政府に提案はさせていただきますが……あまり期待は出来ません。残念なことではありますが」
「我が日本帝国の世論は、先日の明応丸事件以降、急速に硬化しております。遠からず私も本国に召還されるでしょう」
葉巻の灰を灰皿に落としながら、吉田は一瞬瞑目する。
「誠に残念です。吉田大使殿」
毛利は絞り出すような言葉で答える。
吉田茂も葉巻を咥えつつ、目で同意を示す。
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