第33話 私たちは

 南沢とは対照的に伊織の服装は白を基調としている。


 白シャツを淡い青色のデニムパンツにインしているコーデ。一言感想を添えるなら『いまどき女子』が一番しっくりくるのではなかろうか。


 イメージを与えるなら南沢が悪魔、伊織が天使、てな具合だ。


 そんな天子様が一体全体どうしてこの場におられるのか、当たり前の疑問を俺はぶつけたわけだが、


「……………………」


 当の本人は真っ赤な顔して俺を睨みつけてくるだけで答えてくれない。


 それならばもう一人に聞くまでと俺は南沢に顔を戻す。


「こりゃどういうことだ南沢。なんでここに伊織がいる?」


「さっき伝えたばかりじゃない。〝私と速水君の他にもう一人加わる〟……って」


「いやいや説明になってないから。つか、伊織どうこう以前にどうして一人増えてんだよッ! 俺、頼んだっけ? 頼んでないよね?」


「仕方ないでしょ? あたしも行くからの一点張りで言うこと聞いてくれなかったんだもの……堀北さん」


「あ、あたしはそんなこと一言も――」


 伊織は振り返った俺の顔を見るなり、言いかけた言葉を飲み込んでしまった。


 そういう……ことか。


 モジモジと恥ずかしさを全身からアピールしている伊織を目にして、俺は悟った。


 彼女も――〝同じような悩み〟を抱えているのだ、と。


「結局、似た者同士なんだな。俺と伊織は」


「…………は?」


 俺はゆっくりと身を反転させ、怪訝な表情をしている伊織に笑顔を見せる。


「〝処女卒業〟したいんだろ?」


「な、ななななな――なななななななななッ⁉」


 震える口から湯気が出てきてもおかしくないほど沸騰している伊織。ズバリ的中され瞬く間にキャパオーバー、動揺しまくりだ。


「安心しろ伊織。卒業を望むことは恥ずべきことじゃない。だってそうだろ? 俺達はお母さんお父さんがまぐわった結果、この世に生をうけることができたんだ。つまり俺達はエッチの申し子――エッチしたくなるのは当然なんだよ」


「な――なぁにいいこと言っちゃいましたみたいな顔してわけわかんないこと抜かしてんのよッ、この変態ッ!」


 俺の下腹部を狙ってパンチを繰り出してきた伊織。だがそこには天を仰ぎ見るバッキバキのムスコが待ち構えていた。


 伊織のけんと俺のむすこつば迫り合う形になる。


「お、お腹じゃない? なに、この硬いの」


「ふ……そいつが今夜、伊織と顔合わせする俺のムスコさ」


「い、いやッ!」


 俺の言がナニを指していることに気付いたのだろう、伊織は素早く手を引っ込めた。


 それから数歩後退した伊織は、ムスコに触れた手をもう片方の手でさすりながら冷やかな視線を俺に向けてくる。


 これは…………先が思いやられるな。

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