第24話 策士、液に溺れたい

 俺と南沢が付き合い始めた、という情報は金田を発信源にクラス中に知れ渡り、今では他クラスにまで広がっている。


 さすがは氷の女王、高校一美しいとだけあって影響力が半端ない。


 そんな彼女は昼休みが終ってから今に至るまで、ずっと不機嫌そうにしている。眉間にしわを寄せ、腕を組んで座るその姿からは高校生ならぬ迫力を感じる。


 なんとも近寄りがたい雰囲気だが、その態度が災いして誰も南沢には訊ねなかった。


 人との関りを苦手とする南沢のことだ、自分からはまず発しないだろう。そうなると、誰かに訊かれた時こそが俺との交際を否定する絶好のタイミングになるわけだが……それも叶わないと。


 となれば必然的に俺の元に人が集ってくるわけで。


 そこで俺はあることないこと語って聞かせた。


「実は結構前から南沢とは仲良かったんだよねえ~」


「つい先週だよ、南沢に突然屋上に呼ばれちゃってさ……そこで、告白されたんよ」


「アイツ……いつもはツンケンしてるけど、俺の前だと超かまってちゃんなんだぜ?」


 などなど。


 ……すいません、ないことしか言ってないです。なんか『南沢を落した速水スゲー』みたいな空気に気分良くなっちゃって調子乗っちゃってました。つい鼻が勃起しちゃいました、許してください。


 とにもかくにも、外堀そとぼりを埋めることには成功した。本人にとって屈辱的だろう噓エピソードを本人の耳に届くようわざと大きな声で話してたんだ。南沢が我慢の限界を迎えて俺に別れを切り出してくるのも時間の問題……そん時が納め時だ。俺の宝刀ムスコを南沢のマンティスにって意味で。


 これで俺も晴れて――大人の仲間入りだ。


 英語の先生が背を向けていることをいいことに、俺はほくそ笑む。


 そして同時にこうも思った……学生の本文とやらを完全に忘れた一日だったな、と。


 そんな今は六時限目の授業中。俺のムスコは相変わらず、映画等で見受けられるスピードリミッターが解除された車のようにアクセル全開だった。


 多分、『南沢のトンネルん中にぶっこんでくんで夜露死苦ぅ!』というムスコなりの決意表明なんだと思います、はい。


ーーーーーーーーーーーーー


どうも、深谷花です。


簡潔にまとめます。警告を受けてたんですが結果、一部修正及び非公開することで許されました。


やったぜ

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