第21話 退屈な日々を終わらせようとした結果がコレ。
「私、学校生活ってひどく退屈なものだと思っているの」
その言葉を皮きりに、南沢はスラスラと語りだした。
「将来の役に立つのか
確かにそれは辛いな。生きる意味ってなに? とかネットで検索しちゃうくらい退屈だな。同情する。
「なら自分から行動を起こせばいいじゃねーか……速水君はきっとそう思ってるでしょうね。けど違うの、自発的に動いたところで、得られるのは想像の域をでないありふれたものなのよ」
ほぉん?
俺は足の裏で口を塞がれていることなど忘れて、彼女の言葉を
「友達や彼氏彼女を作ったり、夢や目標を持ったり、後者は美化されがちだけれど、それらって凄く普通のことだと思うの。でもその普通を皆は求めて手に入れ手放そうとしない。どうしてだと思う?」
南沢は右足を下ろして俺に意見を求めてきた。
「……退屈を誤魔化したいから、とかだろ?」
「ふふっ。まさにその通りよ」
満足そうな声音でそう言った南沢は、またすぐに俺の口に鍵をかけてくる。
「退屈を誤魔化したい、退屈から逃げたい。だから友達や彼女、夢や目標などといったキラキラしたものに手を伸ばして少しでも充実に近づこうとするのよ。けど勘違いしないでね? 私は別にそれが悪いと言ってるわけではないの。ただ、仮に充実を捕まえられたとしてもそれは一時的であって、すぐにまた逃げられてしまう……それが嫌なのよ」
敵を多く作りそうな発言だなと俺は思いつつ、彼女の次の言葉を待つ。
「
冗談めかした言葉のようだが、彼女の表情は至って真面目なものだった。
なるほどな。中学ん時から
やはり、あの時抱いた親近感はあながち間違いじゃなかったかもしれない。その思いが俺の中で強くなる。
でも、だとしたらますます意味わからんことになるんだが?
「――ならどうしてあんな真似を? ってなるわよね普通」
俺が抱いた疑問を南沢は代弁し、その解――つまり俺が求めた彼女の真意を口にしだした。
「捨てた、ではなく捨ててるつもりでいたと訂正するわ。私はね、速水君……あなたにとても近いものを感じているのよ」
そう言った南沢はおもむろに右足を下ろす。
「退屈を呪い、刺激を求める。私と同類のあなたを退屈から解放してあげれば、きっと今度はあなたが私を解放してくれるに違いない……これがあなたの知りたがっていた答えよ。どう? 蓋を開ければなんとやら、根拠のない勝手極まりない理由でしょ?」
「……………………喋っていいのか?」
「ええ。もう黙ってなくていいわ」
二つの内一つの
俺は「んんッ」と喉の調子を確かめてから口を開く。
「……俺はてっきり、好意の裏返しな行為だとばかり」
「……ギャグ?」
「いや違くて。あんなことされたらそりゃ勘違いもするって話。世の男子高校生、皆俺に賛同するぞ? 多分」
「あら、それは悪いことをしてしまったわね。ごめんなさい」
南沢は床に足をつけ、俺の背後に回る。
「けど安心して? もう二度としないから」
そう言って南沢は俺の両手の枷を解いた。
「急にどうした?」
「飽きたから……それだけよ。短い時間だったけど楽しかったわ、速水君」
俺が振り返って訊ねると、南沢はどこか寂しげな顔してそう言い、背を向けた。
「私は……元の退屈な生活に戻るから」
「あ、ちょいま――」
教室を出て行こうとする南沢を呼び止めようとした時だった。
『――あ、あれ? 何故ドアが閉まってるんだ?』
廊下から――〝男〟の声が聞こえてきた。
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