第4話 エマ・ネグラといつもの日常
「――お待たせ、エマ」
「お待たせ、じゃないわよ! 私がここに来てからどれだけ時間が経ったかわかってる?」
「え、数分くらいじゃないの?」
「数分〝も〟、待ったのよ!」
「あ、うん、ごめんね?」
「フン――」
家の外で待っていたのは僕の友達、エマ・ネグラです。
今日も今日とてエマは朝からプンプンしています。
「…………許してほしい?」
「うん。許してほしいな」
「じゃあ……はい」
エマは手を差し出してきました。
僕はその手をそっと握り返します。
「これで許してくれる?」
「…………うん」
「良かった。じゃ、行こ? エマ」
「うん!」
ここで不機嫌とはお別れ、エマは顔に喜色を浮かべます。
どうして手を繋ぐことが許しとなるのか、それはわかりません。
本人に聞いてみようと思ったこともありました……まぁ、思っただけで実際に聞いたことはありませんが。
お日さまのように笑う彼女を前にするとどうにも……幸せそうだからいいか! となってしまいます。
ともあれ――今日も変わらぬ朝を迎えられて僕は幸せです。
***
エマとの会話を楽しんでいる内に学校に到着しました。
ちなみに、もう手は繋いでいません。他の生徒の姿が見えるとエマの方から放します。
「――ああら、ソータローちゃんおはようでちゅう! 今日もエマお母さんと一緒なんでちゅかぁ? その歳で恥ずかちいでちゅねぇ! ギャハハハハハハハハハハハハッ!」
「おいやめてやれよ。ソータローちゃんが泣いちゃうだろ?」
「おっとぉ、そうだったそうだった――ごめんねぇソータローちゅわあん! 泣かないで? ほぉら、いないいないぶぅわぁ! ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!」
教室に足を踏み入れるなり、ザギウス君とラビィ君がちょっかいをかけてきました。これもまた、いつもと変わらない光景です。
「……気にしなくていいよ、ソータロー」
「……うん」
庇うように僕の前に経ったエマは机に組んだ脚を乗せて座っているザギウス君と、女子二人の肩を抱いているラビィ君を睨みつけます。
「あ~あ、ソータローちゃんが泣いちゃう前にエマお母さんが怒っちゃったじゃねーかよ。ザギ、お前のせいだぞ」
「あぁ? ソータローちゃんがクソザコ泣き虫なのがいけねんだろ?」
「はっ、だな」
「ちょっとッ! さっきから聞いてればあんた達ね――」
お腹を抱えてケラケラと笑っている二人に対し、エマは荒げた声をぶつけ正面から向かって行こうとする。
「――大丈夫……僕は大丈夫だから」
「くっ――でもッ!」
「落ち着こ? ……ね?」
「……………………」
エマは最初、引き止める僕の手を振り払おうとしました。けれど最後には悔しそうに歯噛みしながらも思い止まってくれました。
この後も僕への陰口は続くはずです。でも、目に見える
「――〝ストーンアロー〟」
「え?」
いつもなら。
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