第3話 ソータロー・ハヤミ

 ソータロー・ハヤミ、それが僕の前です。今はもういない両親がつけてくれた、大好きな名前です。特にお気に入りなのが他の人と被らない珍しさです。唯一ゆいつ無二むに感じがするので……まぁ、名前だけですが。


 父さん、母さん、時の流れは早いもので、僕も今年で17になります。今日という日まで、大きな病気をわずらうことなく健康そのもので過ごしてこれたのはお二人のおかげです。健康な体で産んでくれたこと、改めて感謝を…………なんだか、死を悟った人の発言みたいでしめっぽいですね。これからも僕は強く生きていくので安心してください。


 ただ……精神的面ではちょっと弱り気味で。というのも、今年で〝オパイオニア魔法学校〟に入学してから二年目になるのですが……思うような結果が残せず、周りとの差は開いてくばかりで……正直、もう自信ないです。


 父さんでも至れなかった〝賢者〟を目指して頑張ってきたつもりだったんですが……所詮はつもり、才能のない僕には分不相応の望みだったようです。


『君の持つ魔力量は誇っていいものだ』


『賢者に至れる可能性を秘めている』


『Aクラスのソータロー君? って物凄く天才なんだって』


 期待や注目といったもがあったのは入学してから極僅かの間だけでした。僕はそれらをことごとく裏切ってしまいました。


『賢者じゃなくて道化師に向いてんじゃねーの?』なんて言われたこともありますが、不思議なことに全然悔しくなかったんです。むしろに落ちたというか――確かに皆、僕で笑ってくれてるなって納得してしまったんですよね。


 ……けど、まだ心のどこかで賢者を諦めきれていない自分もいるんです。


 まだ、僕を応戦してくれてる人がいるから。


「――ソータローッ! 起きてるー? 学校行くわよーッ!」


「あ、うん! ちょっと待ってて! ――父さん、母さん、行ってきます!」


 僕は二人の宅墓たくぼにぺこりとお辞儀してから、家を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る