第8話 休み時間2 【4】

 ん?


 程なくして、俺はある違和感に気付く。


 なんか……湿ってるような……。


 丁度俺の唇の付近だ。もちろん、俺のヨダレとかじゃない。なにせ口を一文字いちもんじに結んでいたのだから。


 なんなら窒息死寸前だったしな。俺のヨダレじゃないことは確かだ。


 では一体なにが? 俺は一旦震えるのを止め、南沢のアソコから顔を離した。


 んなッ――――。


 純白のパンティーに、100円玉を楕円だえん形にしたくらいのシミ? がくっきり浮かび上がっているのを見て、俺はハッと息を呑んだ。


 め、めちゃくちゃ感じてる?


 いつまでも無邪気な子供のままだと思っていた。どこまでも白く、闇の入る余地すらない心のままだと思っていた。


 けど違った……当たり前だけど実際は成長していたんだ。現に俺の眼前にある純白のパンティーは、大人の階段をいくつか上っている。


「は、速水君? 急に止まって、どうしたの?」


 声からして南沢が困惑しているのがわかる。


「いや、ちょっと、濡れてたからさ」


「んもぅ、デリカシーって言葉知ってる?」


 コツン、と優しく頭を叩いてきた南沢に、俺は顔を上げて「すまんすまん」と謝った。


「「………………」」


 俺達はしばし無言で見つめ合う。南沢は瞳を僅かにうるませ、頬を火照ほてらせている。


「ねぇ、速水君……」


 口を開いたはいいが、名前を呼んだだけで南沢は再び口を閉ざしてしまう。さすがに気になるので俺は「え、なに?」と続きを促した。


 すると彼女は妖艶ようえんな笑みを浮かべて、指に舌をわせた。


「私の……じかで見たい?」


 強烈の一言に尽きる。


 俺はゆっくりと視線を落とした。純白のパンティーはスカートに隠れてしまっている。


 見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい嗅ぎたい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい舐めてみたい見たい見たい見たい見たい。


 もはや迷いはなかった。俺は南沢に視線を戻して力強く首を縦に振った。


「ふふっ……じゃぁ、はい」


 彼女はスカートをまくり上げ、俺の前に再び純白のパンティーが現れた。


 色白の肌に黒ニーソ、純白のパンティーとこれだけでも童貞の俺にとっちゃ眼福がんぷくもんだってのに――更にその奥を拝ませてくれるなんて。


 唾を飲み込む音がやたら大きく聞こえる。自分でもどえら緊張しているのがわかる。


 ゆっくり時間をかけて下ろした方がいいのか? それとも一気の方がいいのか?


 そう思案しつつ、俺は震える我が手でパンティーの両サイドを掴んだ。


「…………い、いくぞ?」


「……うん」


 南沢の悩ましい声を聞いて、俺はゆっくり下ろすことに決めた。因果関係は? と問われれば、なんかそっちの方がエロいからとしか答えられない。


 いざ、参るッ!


「み、南沢さん? そこでなにしてるの?」


 ――――ッ⁉


 パンティーを下ろし始めようとした時だった……南沢でも、もちろん俺でもない第三者の声が――空気を、凍てつかせた。

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