第9話 堀北伊織1
突然だが俺には幼馴染がいる。そいつの名前は
家が近所ということもあって、小学校に入る前から遊んでたりしていた。
小、中、そして高校も一緒。身内を抜きにしたら伊織が一番長いかもしれない、顔を合わせている時間が。
性格は超がつくほど真面目だがお堅いわけじゃなく、むしろ明るい。友達も多くいる。
この絶望的な状況下で、俺は伊織のことを考えていた。もちろん現実逃避してるんでもなく走馬燈でもなく真剣に。
どうしてか? それは突如現れた第三者が一体だれなのかという話に繋がってくる。
間違いない伊織だ、声からして伊織に違いない。
直接確認したわけじゃない。けれども俺は確信している。
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!
今更遅いのは自分でもわかっている。それでも俺は息を止め、『俺は置きものだ』と自己暗示する。
「堀北さんこそ、ここへなにしに?」
質問に対し質問で返した南沢。〝堀北さん〟と口にしてたことから第三者の存在が
やっぱ伊織だ……。
背中に嫌な汗が
南沢のパンティーを下ろそうとしているところを伊織に見られたら俺……多分終わる。最悪、親にまで伝わってしまうかも……。
昔から超がつくほど真面目が故に、伊織はこの手のエッチな行いを嫌っている。それは今も変わっていない。
中学の時、部屋に隠していたエロ本が伊織に見つかって、俺の目の前で八つ裂きにされた時は……泣いたな。
その後、俺の泣き叫ぶ声を聞いて部屋に駆けつけてきた母親にまでエロ本の存在がバレて、更に泣いたっけか。後にも先にもあれほど泣いた経験はない。
とにかく伊織にバレるわけにはいかない! なんとかしてこの
「早太郎に用があって追いかけてきたんだけど、途中で見失っちゃって……それで今探してる最中なんだけど、南沢さんどこかで早太郎見かけてたりする?」
どうやら伊織は俺を探しているらしい。そして近くにいるにも関わらず俺に気付いていない様子。
恐らく、伊織の立つ位置からじゃ南沢の体が邪魔して俺の顔が見えないんだ。
不幸中の幸い。細い細い蜘蛛の糸が天から垂れてくる。
「えっと、早太郎とは誰のことかしら?」
ナイスだ南沢! そのまますっとぼけ続けてくれ!
「誰って……南沢さん、隣の席じゃん」
「あ、速水君の名前だったのね。速水君だったら――ここにいるわよ?」
え?
「あ、そこにいるの早太郎なの? ――ちょっと早太郎ッ! ずっと呼んでたのにどうして無視するの……よ……」
え?
回り込んできた伊織と目が合ってしまった。
伊織の表情は見る見るうちに冷めたものへと変わっていく。
「……………………」
そして地に膝をつけている俺を、ゴミを見るような目で見下ろしてくる。
いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!
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