第7話 寄り道
午前中で講義が終わった俺は海と学食を食った後、家に帰る途中でアイスでも買おうかとスーパーに訪れた。
平日の昼間という事もあって人が疎らな中、買い物かごを取ろうとした時に少し先に美空が見えた。
普段、この曜日は買い出しをしない日だから、美空の後ろから話しかける。
「美空、今日何か安いのか?」
急に後ろから話しかけられたことに驚いたのか、美空は少し緊張した面持ちでこちらを振り返る。
その瞳が俺を捉えると途端に表情が溶けるように柔らかくなり、その変化に見惚れていると美空がサツマイモに指を指しながら答える。
「うん、今日はサツマイモとニンジンが安いみたいだから買いに来たの。まだ、どう料理するか考えてないんだけどね」
「サツマイモのおこわとか良いかもな」
「良いね!今夜はそうしようか」
そのまま2人で買い物を続けていると、職業体験なのか中学生ぐらいの子どもが4,5人で品出しをしている近くに通りがかった。
「職業体験かな?」
「懐かしいな。小学生の時は一緒じゃなかったけど、中学の時は一緒に科学館に行ったの今でも覚えてるわ」
「懐かしいね。今度、中学校の制服着てあげようか」
「そんな趣味はないぞ」
「本当に着なくていいの?」
「…考えさせてください」
そんな話をしながら、俺たちは彼らが作業している少し先にあるアイス売り場にたどり着いた。
俺は今日、某有名メーカー新味のアイスを買おうと思っていたので、それを手に取り、手持ちのかごに入れると美空がそれを見て声を上げる。
「それ新味出てたんだ。
「あぁ、これと抹茶が新味らしい」
「じゃあ私は抹茶にしようかな。ショコラも食べさせてね」
「わかった。あ~んでもしてやるよ」
会計をするために先ほど通りすがった中学生がいた場所を再び通ると彼らはこちらを見ると揃って視線を逸らしてコソコソと話始めた。
気になって耳を澄ませると彼らは確かに俺たちの事を話していた。
「制服…コスプレ」
「あ~んだって…」
彼らは隠れて話しているつもりだろうが、盛り上がっているのか俺たちに断片的ではあるが聞こえてくる。
その内容に俺と美空は顔を見合わせた後、赤くなった顔を夕日で誤魔化しながら家に帰った。
中学生に言われたことを引きずっていたのか、アイスを食べさせあう時にいつも以上に美空が照れていて可愛かった。
勿論、俺も恥ずかしかったのは確かだが、ここまで美空が照れるのは最近だと珍しいので、中学生諸君に感謝を言いたい。
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