第16話 日常?
あの衝撃的な水族館デートから数日が経った夏休みの日、俺の思考は未だにあのキスに捕らわれたままだった。
一体、美空はどうゆうつもりなんだ…
あれから美空は友人との旅行に出かけたので会ってはいないが、次に会ったらどう接すればいいんだろう。
予定通りだと今日、美空が帰ってくるからそれまでに自分の中で結論を出したいんだが………
やっぱり、わからねぇ。
ここまで深く考えたけど、そもそも美空は帰ってきたら家に来るのか?
美空も気にして来ない可能性もあるよな。なんならその可能性の方が高いんじゃないか。じゃあ、今日はまだ考えなくても大丈夫か。
昼飯も食ったし寝るか。
自堕落な生活は今だけの特権だしな。
そしてこの後、俺はこの時にちゃんと向き合って、考えなかったことを後悔することになる。
◆◆◆
午後六時、俺は寝苦しさを覚えて目が覚めた。
エアコンの設定が甘かったかなと思ってリモコンを取ろうとすると、俺のベットにある違和感に気づいた。
「美空!?」
その違和感の正体は俺の腹に頭を預けてベットに腕を載せて眠りこけている美空だった。
「美空、起きろ。もう夜だぞ」
声をかけても美空が起きる気配もなかった。
「ったく。無防備すぎるだろ」
思わず零れ出た自分の発言に俺は自分で驚いた。
今の俺の発言は美空の幼馴染としての発言ではなく、一人の男としての発言だった。
今までなら美空が傍で寝ていたとしても寂しいのかなぐらいしか思わなかったのに、今は完全に美空を女として見ていた。
「うにゅ、優斗…好き」
…可愛すぎんだろコイツ。
なんかそんな事を考えるのがバカらしくなってきた。
普段よりもあどけない表情を浮かべる美空の頬を軽く撫でる。
「俺はどうしたいんだろな」
そんな問いに答えが返ってくることはなく、ただ時が過ぎていった。
美空を寝かしたまま、俺は今日の夕飯を作り始める。
本日のメニューは麻婆豆腐だ。
片栗粉を流し込むタイミングで匂いにつられたのか美空が起きて俺の寝室を出てきた。
「おはよう、優斗。私の分もある?」
「おう、当たり前だろ。皿運ぶの手伝ってくれ」
「は~い」
未だに寝ぼけた様子の美空が皿を運び終えたら、お待ちかねの夕飯だ。
麻婆豆腐をレンゲですくって口に入れると特有の風味と辛みが広がる。今日は上手くできたな。
「美味しい」
美空の口にもあったようで互いに黙った口を動かしていた。
「「ご馳走様」」
俺の方が量が多いのもあってか同時に食べ終わった俺たちは片づけをしてテレビを見ていた。
「ねぇ、優斗」
「なんだ」
急に真剣な雰囲気を纏って美空が話しかけてきた。
「私、優斗と恋人になりたい。勿論、優斗がまだ同じ気持ちじゃないことはわかってる。けど、私は優斗ともっといろんなことをしてみたい。水族館の帰りに私がしたような幼馴染じゃできないことも恋人でならできる。それに、私は優斗を誰にも渡したくないし、これからもっと多くの時間を優斗とすごしたいの」
美空のその真っ直ぐな言葉に俺は自分の気持ちが余計わからなくなっていた。
「俺は…」
「今、答えは出さなくても良いよ。けど、どういう答えだろうと私をあまり待たせないでね。寂しいから」
俺は何故か美空がちゃんと傍にいるのに俺から離れていってしまったような感覚を覚えていた。
「真面目な話はおしまい。また明日」
去り際に俺の頬に口を触れさせて後、笑いながら美空は自宅に帰っていった。
俺も自分の答えを見つけなきゃな…
夜中まで色々なことを考えていて、次の日の夏季集中講義を寝坊仕掛けたのを美空に起こされたのはないしょである。
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